2011 Fiscal Year Annual Research Report
無自覚性低血糖の発症機序の解明-アデノシンを介した脳内グリコーゲン増加の関与-
Project/Area Number |
22790867
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
河島 淳司 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (70467984)
|
Keywords | 脳・神経 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
1.ラットに6単位/kg体重のヒトインスリンを皮下注射した場合、インスリン投与2時間後に最も血糖が低くなり、インスリン投与6時間後には投与前の血糖に回復するため、インスリン投与6時間後の脳内グリコーゲンを測定したところ、低血糖時に減少していた脳内(大脳皮質、視床下部、海馬)のグリコーゲンはいずれも低血糖前のレベルまで回復していた。 2.インスリン皮下投与による低血糖からの回復後の脳内グリコーゲンの増加がアデノシンを介しているか検討するために、インスリン投与直前に250μgのアデノシン受容体アンタゴニスト8-sulfophenyltheophylline(8-SPT)を脳室内投与した後にインスリン皮下注射による低血糖を誘導し、低血糖後の脳内グリコーゲン量を測定した。インスリン投与2時間後の大脳皮質、視床下部及び海馬のグリコーゲン量は著明に低下し、インスリン投与6時間後のグリコーゲン量はいずれも低血糖前のレベルまで回復していた。8-SPT前投与群においても低血糖回復後の大脳皮質、視床下部及び海馬のグリコーゲン量は回復しており、8-SPT非投与群と比べても差がなかった。 3.インスリン皮下投与による低血糖からの回復後の脳内グリコーゲンの増加にインスリン自体が関与しているか検討するために、インスリン投与直前に21nmolのPI3-kinase阻害剤であるLY294002を脳室内投与した後にインスリン皮下注射による低血糖を誘導し、低血糖回復後の脳内グリコーゲン量を測定した。インスリン投与6時間後の大脳皮質、視床下部及び海馬のグリコーゲン量は、LY294002投与群、LY294002非投与群で差がなかった。 以上の結果から、インスリンによる低血糖から回復した後の脳内グリコーゲンの増加は、アデノシン受容体やPI3-kainseを介して引き起こされている可能性は低いと考えられた。
|