2011 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン抵抗性のBMPs誘導肝癌上皮間葉移行における細胞生物学的意義
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22790874
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
川口 巧 久留米大学, 医学部, 講師 (00320177)
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Keywords | 肝細胞癌 / インスリン抵抗性 / 上皮間葉移行 / IL-6 / glucagon-like peptide-1 / dipeptidyl deptidase-4阻害剤 / ピオグリタゾン / 糖尿病 |
Research Abstract |
インスリン抵抗性を有する肝癌患者は高率に癌が再発し予後不良である。一方、上皮間葉移行(EMT)は、癌の再発に深く関与する現象であるが、肝癌再発のとの関連は未だ明らかではない。昨年度、我々は、インスリンとインターロイキン(IL)-6を肝癌細胞癌株の培養上清に添加することで、肝癌細胞株のEMTが誘導されることを明らかにした。そこで、今年度の研究目的は、インスリン抵抗性改善薬剤のインスリン+IL-6誘導肝癌EMTにおよぼす影響を検討することである。HepG2肝癌細胞株の培養上清にアンジオテンシンII受容体拮抗薬を添加したが、コントロール群と比較して、インスリン+IL-6誘導肝癌EMT(紡錘形細胞数)に有意な変化は認められなかった。同様に、glucagon-like peptide-1受容体アゴニストを添加した場合も、コントロール群と比較して、インスリン+IL-6誘導肝癌EMTに有意な変化は認められなかった。ピオグリタゾンを添加したところ、アポトーシスを呈する細胞数が増加したことから、インスリン+IL-6誘導肝癌EMTへの影響は評価が困難であった。一方、dipeptidyl deptidase-4阻害剤を添加したところ、インスリン+IL-6誘導肝癌EMTに有意な減少が認められた(P<0.05)。本研究により、ピオグリタゾンは肝癌細胞株に対し抗腫瘍活性を有する可能性が示唆された。また、dipeptidyldeptidase-4阻害剤はインスリンとIL-6による肝癌細胞株のEMTに抑制的に作用する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上皮系・間葉系マーカーの発現を免疫染色およびウエスタンブロッティングにて詳細に評価できなかったが、当初、目的としていた肝癌細胞上皮間葉移行を抑制しうる薬剤を同定することに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、我々は、培養細胞を用いた実験にて肝癌細胞上皮間葉移行を抑制しうる薬剤を同定することに成功した。 今後は、同薬剤の効果をコリン欠乏食飼育(CDAA)ラットおよびSTAMマウスの2つの異なる動物実験にて検証する。また、肝癌細胞に対する影響だけでなく、肝脂肪化や肝線維化におよぼす影響も併せて検討する。
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