2010 Fiscal Year Annual Research Report
BMP-15のヒト生殖における役割と恒常活性型BMP-15の開発
Project/Area Number |
22790886
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
稲垣 兼一 岡山大学, 岡山大学病院, 助教 (80549882)
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Keywords | 卵胞発育 / 骨形成蛋白 |
Research Abstract |
原発性卵巣機能低下症(Premature ovarian failure/Primary ovarian insufficiency)患者や二卵性双生児の母において報告されたBone morphogenetic protein-15 (BMP-15)及びGrowth differentiation factor-9 (GDF-9)の遺伝子変異のうち高頻度に認められ、かつ対照群に認められない4種のミスセンス変異BMP-15R76C, BMP-15R206H, GDF-9K67E, GDF-9P103Sを抽出し、変異遺伝子導入プラスミドを作成した。次にその変異遺伝子導入プラスミドをHEK293F細胞に遺伝子導入し、BMP-15・GDF-9の生物学的活性への影響を検討した。その結果、野生型BMP-15・GDF-9に比べ、すべての変異型BMP-15・GDF-9において卵巣顆粒膜細胞の細胞増殖能・Smadシグナル伝達などの生理活性の減弱を認めた。さらにイムノブロットによる細胞溶解液や培養液の検討にて、変異型BMP-15・GDF-9ではプロ蛋白の合成障害を認めないが、成熟蛋白の生成・分泌が減少することが明らかになった。このことより変異型BMP-15・GDF-9に認める生物活性の低下はプロ蛋白の翻訳後processing障害による成熟蛋白の分泌低下に起因することが示唆された。ヒトと同じく単排卵であるヒツジにおいても成熟蛋白の減少が多排卵・多胎に関与することが既に報告されていることから、卵母細胞因子BMP-15・GDF-9の変異が、ヒトにおいても臨床的に多排卵による二卵性双生児の発生や多排卵後の卵胞枯渇による早期卵巣機能不全に関与する可能性が考えられた。ヒトを含む哺乳動物の卵胞形成・発育に、卵巣局所にて作用するautocrine/paracrine factorが重要な役割を果たすことが明らかになっており、なかでも卵母細胞に発現するBMP-15やGDF-9は卵胞成長に必須の因子であると認識されているが、今回の知見はそれを裏付けるものと考えられる。
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