2011 Fiscal Year Annual Research Report
成人T細胞白血病細胞における恒常的NF―κB活性化機構の解明と治療標的分子の同定
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22790905
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
斉藤 愛記 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (00516312)
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Keywords | ATL / HTLV-I / NF-κB / A20 / NIK |
Research Abstract |
成人T細胞白血病(ATL)は非常に悪性度の高い血液疾患であり、依然として予後が不良である。ATL細胞の悪性形質発現の分子機構は不明な点が多く、そのため分子標的治療の確立が遅れている。申請者はATL細胞の大きな特徴である恒常的なNF-κB活性化に着目して研究を行っており、これまでにATL細胞における恒常的NF-κB活性化の背景にNF-κB inducing kinase(NIK)の異常発現があることを見出している。平成22年度の研究成果報告では、A20の変異や欠損がみられる様々なB細胞由来の悪性リンパ腫細胞とは異なりATL細胞株ではA20タンパク質の発現が検出されること、そしてユビキチン化修飾酵素A20がNIKによるNF-κB活性化を増強することを報告した。平成23年度の研究成果として、JSPFAD(HTLV-1感染者疫学調査)の協力のもと、申請者はATL患者由来末梢血単核細胞においてA20m RNAの発現が14例中約半数で明らかに亢進していることを見出した。また、ATL細胞株におけるA20の発現を抑制すると、NHの下流分子であるp52の発現が減弱すること、そしてATL細胞株のNF-κB依存性転写活性が30~50%低下することが分かった。特筆すべきことは、ATL細胞株におけるA20の発現抑制によってATL細胞株の増殖が著しく抑制されたことである。A20の発現を抑制しpropidium iodide染色によるフローサイトメトリー解析を行ったところ、細胞周期の停滞あるいは遅延、そして細胞死の指標であるsub-G1期の誘導が認められた。さらに初期以降の細胞死の指標であるannexin V陽性細胞の割合が増加することが明らかとなった。平成22年度の研究成果として、ATLの原因ウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)のウイルスタンパク質Taxによる恒常的NF-κB活性化はA20の発現により変動しないことを見出したが、意外なことに、今回申請者はA20の発現抑制はTax陽性であるHTLV-I感染細胞株のNF-κB活性化を変動しないものの、細胞増殖を抑制することを明らかにした。 以上の結果は、A20はATL株およびHTLV-I感染細胞株の生存に必要な因子であることを示すものであり、一方で増殖を支える分子機構はATL株とHTLV-I感染細胞株では異なる可能性がある。平成24年度には、さらにA20がATL株およびHTLV-I感染細胞株の増殖を支える分子機構について詳細な解析を行うと共に、これらの細胞株におけるA20の悪性形質発現に対する役割を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ATL細胞およびHTLV-I感染細胞におけるNIK、あるいはTaxを主とした恒常的なNF-κB活性化機構の分子基盤を分子レベルで解明することを目的として研究を行った結果、A20がこれらの細胞株における生存に必要な因子であることを明らかにし、A20が治療標的分子となる可能性を示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、A20の細胞生存、悪性形質発現に対する詳細な分子機構について、A20のユビキチン化修飾酵素としての側面も含めた上で、詳細に解析を行う。また、ATL細胞株においてA20とNIKの直接的な関与があるかどうかを明確にする必要がある。
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