2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期制御分子Cdh1の造血器特異的不活化による細胞分化制御機構の解明
Project/Area Number |
22790919
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石澤 丈 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60445260)
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Keywords | 急性リンパ性白血病 / 細胞周期 / Cdh1 / 遺伝子毒性ストレス / 細胞脆弱性 / G2/Mチェックポイント |
Research Abstract |
本年度は、がん遺伝子myc誘導性のB細胞性急性リンパ性白血病モデルマウス(以下、B-ALL/LBLマウス)における細胞周期制御因子Cdh1不活化の意義を解析してきた。Cdh1正常B-ALLILBLマウスの表現型とを比較検討した結果、Cdh1不活化(以下、Cdh1Δ/Δ)骨髄細胞を起源とした場合、以下の現象を観察している。1.B-ALL/LBLが同様の表現型として同程度に発症した、2.巨大なリンパ節腫瘤を形成する傾向にあり、かつその腫瘤が自然退縮する現象が見られた、3.一次移植群については、Cdh1 Δ/Δ群の方が予後良好であった。しかし腫瘍細胞を二次移植・三次移植するとその予後は逆転し、Cdh1Δ/Δ群の方が予後不良となった。本実験開始当初の仮説は「(正常細胞では既に平成22年度に研究者自身が証明した)Cdh1不活化に伴う遺伝子毒性ストレスに対する造血細胞の脆弱性が、mycがん遺伝子という遺伝子毒性ストレスによっても顕在化し、その結果白血病発症は抑制される」というものであった。しかし1.に記載の如く、本実験系では仮説に反してCdh1Δ/Δ群でのB-ALL/LBL,が発症し得た。現に、Oncomineのデータベースよりヒト臨床検体のマイクロアレイデータを検索すると、ヒトB-ALL/LBL検体においてもCdh1高発現と低発現の両群が存在し、申請者の得た結果に合致する。従って、本実験系はCdh1発現量という観点において、ヒトB-ALL/LBLの病態モデルとなりうると考える。 また申請者は、2.の腫瘤の自然消退、3.における一次移植群でCdh1Δ/Δ群が予後良好であることから、rCdh1不活化に伴う遺伝子毒性ストレスに対する細胞脆弱性(すなわちG2/Mチェックポイントの破綻)を内在させたままB-ALL/LBLが発症する」という新たな作業仮説を立てた。そこで、本実験系を活用し、放射線照射あるいは遺伝子毒性を持つ薬剤に対する反応を比較検討することで、Cdh1のB-ALL/LBL、における「予後因子」並びに「治療標的」としての可能性を検証したいと考えている。
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