2011 Fiscal Year Annual Research Report
質量分析計を利用した血中小麦タンパク質の網羅的分析と体内動態の解析
Project/Area Number |
22790930
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
高橋 仁 島根大学, 医学部, 助教 (10432618)
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Keywords | 食物アレルギー / 抗原 / 質量分析 |
Research Abstract |
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)発症の機序は、運動負荷などの二次的要因が腸管からの抗原の吸収を増強させている可能性が示唆されるが、その病態機序、及び、吸収された抗原の生体内における動態は明らかでない。これまで、当研究室において、小麦摂取と運動負荷により症状が誘発された血清において、症状の出現に先行して血中のグリアジン濃度が上昇していることを明らかにした。本研究は、小麦が原因となるFDEIA患者の誘発試験時の血清において、血中の小麦タンパク質を質量分析計を用いて同定・定量し、症状の誘発と相関する血中小麦タンパク質の体内動態を明らかにすることを目的としている。 前年度、iTRAQ法を用いた血中小麦タンパク質の網羅的同定を試みたが、小麦グリアジンのアミノ酸配列はトリプシン認識配列が乏しいため、生じたペプチドの質量が本法に不適であること、また、データベースに登録されている小麦タンパク質の種類が少ないため、タンパク質の同定率が低くなるために網羅的な同定方法は不向きであると考え、本年度は、既知の主要な小麦アレルゲンを各種のプロテアーゼを用いて消化し、得られたペプチドに対して選択反応モニタリング法を用いることとした。そこで、主要な小麦抗原であるω-5グリアジン、および、高分子量グルテニンをグルテンから抽出し、高速液体クロマトグラフィーにて精製するとともに、両タンパク質を大腸菌発現系にて発現精製し、標品とした。得られた標品を、トリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、エンドプロテイナーゼAsp-N、および、Glu-Cで消化し、消化産物であるペプチドのプロファイルを作成するため、LC-MSMSの流速、電圧等の諸条件を検討するとともに、逆相カラムの選定、および、至適なプロテアーゼの選定を行った。これらの条件をもとに、来年度、標品を用いたLC-MSMSのモデル条件を構築するとともに、主要な小麦アレルゲンの血中濃度測定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の、iTRAQ法を用いた分析にて血中に移行した小麦抗原を同定し、同定したペプチドを標品として用いる予定であったが、小麦抗原が一般的なプロテアーゼで切断されにくいこと、および、十分な小麦タンパク質がデータベース上に登録されていないことが判明したため。
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Strategy for Future Research Activity |
小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの主要な抗原は、ω-5グリアジン、および、高分子量グルテニンであることは、これまでの研究から明らかにされていることから、今後の方策として、これらの主要な抗原をターゲットに絞った血中小麦アレルゲンの定量法の開発を行う。また、小麦依存性運動誘発アナフィラキシー以外の小麦アレルゲンとして、幾つかの小麦タンパク質が明らかであるため、これらの小麦タンパク質を含めた定量条件を探る。
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