2011 Fiscal Year Annual Research Report
膠原病合併肺動脈性肺高血圧症における血管内皮前駆細胞の役割の解明
Project/Area Number |
22790942
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白井 悠一郎 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (70528801)
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Keywords | 膠原病 / 肺高血圧 / 血管内皮前駆細胞 |
Research Abstract |
MCTDや強皮症といった膠原病の難治性病態の一つである肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、肺動脈の内腔狭窄で、血管平滑筋および内皮細胞の増殖と線維化からなるリモデリングによって形成される。近年、循環血中の単球が局所にリクルートされ、血管新生や線維化病態に関わることを示す知見が集積されている。申請者の所属する研究グループは、ヒト末梢血単球のサブセット(単球由来多能性細胞)が間葉系細胞や血管内皮への分化能を獲得することを発見し、強皮症の末梢血管内腔狭窄病変の病態形成における中心的役割を果たす可能性を見出した。PAHにおける肺動脈病変の病理像も類似していることから、末梢血単球の多分化能や組織修復に関する成果を、PAH-CTDの病態解析に応用することとした。そこで、今回は末梢血単球の遺伝子発現を網羅的に検討することで、膠原病に伴うPAH病態における単球の役割を追究することを目的とした。 前年度は、背景因子を一致させたPAHを有する強皮症3例とPAHのない強皮症3例から末梢血CD14+単球を分離し、PCRアレイ法を用いてケモカイン、細胞外マトリックス、TGFβ/BMPシグナル、血管内皮に関わる計318遺伝子の発現を比較した。その結果、PAH症例で発現の高い17遺伝子と発現の低い17遺伝子が抽出された。今年度は、各遺伝子について、PAHを有する患者検体、PAHのない患者検体、および健常人検体で半定量的PCRによる2次スクリーニングを行い、PAH症例ではCCL5、CCR6、LTBP-1、OCLNの発現亢進とTGFB2の発現低下が見出された。これらの遺伝子の既知の機能から、循環血液中の細胞動員や細胞接着の亢進、抑制性TGFβ/BMPシグナル分子の低下が示唆された。以上から、本研究では、強皮症患者において、末梢血単球が遊走や、接着能の亢進を介して肺動脈のリモデリングに関わる可能性が示唆された。今後、多数例の患者検体を用いて、3次スクリーニングによる候補遺伝子の絞り込みを行う。.
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