2011 Fiscal Year Annual Research Report
アトピー性皮膚炎の発症においてケラチノサイトと炎症性細胞とが果たす役割の解明
Project/Area Number |
22790949
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
安田 琢和 独立行政法人理化学研究所, アレルギー免疫遺伝研究チーム, 研究員 (00373374)
|
Keywords | アトピー性皮膚炎 / 好塩基球 / 肥満細胞 / IgE |
Research Abstract |
本年度は、アトピー性皮膚炎のモデルマウスとして、研究代表者の所属するチームで新たに樹立したミュータントマウスであるspadeマウスを用いて、皮膚炎発症に関わる細胞の解析と皮膚炎発症の制御に関する研究を行った。 1.皮膚炎発症に関わる細胞の解析 spadeマウスの耳皮膚において、皮膚炎発症前と発症後とで、好酸球、好中球、好塩基球について組織染色を行い、野生型マウスの耳皮膚とで比較した。結果、どの細胞も野生型に比べ多くの細胞が浸潤しており、発症後には、さらに多くの細胞の浸潤が見られた。特に好塩基球に関しては、特異的遺伝子の発現が発症前から顕著に高くなっており、この細胞の皮膚炎発症への関与を強く示唆した。 次に肥満細胞について、この細胞を欠損するマウス(Wshマウス)との間で、肥満細胞欠損spadeマウスを交配により作製し、観察を行った。結果、このマウスでもspadeマウスと同程度に皮膚炎の発症が見られた。さらに血清中のIgE値の測定では、IgE値がspadeマウスでは、発症後に増加しその値を維持するのに対して、Wsh-spadeマウスでは、同様に発症後に増加した後、減少することがわかった。これまで、アレルギー炎症において重要視されてきた肥満細胞、IgEが、本モデルでは補助的な役割にとどまることが示された。実際、ヒトでもIgE非依存的な病態が存在し、このよいモデルとなり得ると考えられる。 さらに、NK細胞、NK-T細胞についても、チームで新たに樹立した1115^<L117P>マウス(解析結果の一部を下記雑誌論文で発表)との間で、両細胞を欠損したspadeマウスを作製し、観察を行った。結果、このマウスでもspadeマウスと同程度に皮膚炎の発症が見られ、本モデルではこれらの細胞も皮膚炎発症への関与は小さいと考えられた。 2.皮膚炎発症の制御 spadeマウスでは、ほぼ全てのMutant個体で耳から発症が始まる。これは、その他の部位が体毛により保護されているからではないかと考えており、このことについて検討を試みた。結果、Mutant個体の背中の体毛を除去した後、痒み誘導ペプチドを投与することで、5日以内に皮膚炎を誘導できることを見いだした。これは、皮膚炎の開始を制御できることを示せたことになり、今後も重要な研究手法として活用できるものと考えている。
|
Research Products
(1 results)