2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトES/iPS細胞からの造血幹細胞及び機能的赤血球の誘導
Project/Area Number |
22790979
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丹羽 明 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (20546999)
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Keywords | ヒトES細胞 / ヒトiPS細胞 / 造血分化 / 無血清培養 / 造血幹細胞 |
Research Abstract |
ヒトES/iPS細胞を、マトリゲルコートした培養皿の上でBMP4、VEGFなどのサイトカインを含む血清非含有培地を用いて培養した。サイトカインの濃度や投与時期を工夫することにより、生体胚発生における原始線条に相当する段階を経て、中胚葉系前駆細胞を段階的に分化誘導することに成功した。次に、SCF, TPO, Flt-3Ligandなどの造血刺激サイトカインに切り替えて培養を継続し、造血コロニーの出現と共に浮遊培養液中に種々の血液細胞の出現を観察することに成功した。この際に加えるサイトカインの組み合わせを工夫することにより、骨髄球系、赤芽球系、巨核球などの種々の造血細胞を誘導することが可能であった。 誘導されたES/iPS細胞由来の中胚葉系前駆細胞(KDR陽性CD34陽性)を一細胞ずつ分取して分化能を解析したところ、これらの細胞分画中に造血細胞と血管内皮細胞の両方への分化能を併せ持つ、ヘマンジオブラストに相当する細胞の存在を確認することが出来た。次に、コロニーアッセイにより、これらの前駆細胞が単クローン性に段階的な過程を経て成熟血球細胞へ分化している事を示した。さらに、赤芽球系の長期分化培養による検討から、本系の中で1次造血型(ヘモグロビンε産生)から2次造血型(ヘモグロビンγ、β産生)へのスイッチが経時的に起きていることも確認することが出来た。最後に、本系で得られた好中球の運動能、貪食能、活性酸素産生能、および赤血球の酸素解離曲線を解析し、これらの細胞が生体の血球同様に機能的血球として作用することを証明した。 以上の結果から、試験管内で血清非依存的かつ安定した効率で、種々のヒトES/ips細胞由来造血細胞を段階的誘導する系の構築に初めて成功したと考えている。現在は、In vitroで分化させた血球を、我々の研究室で開発したNOGマウスなどの免疫不全マウスに移入し、In vivoでの血球系再構築を試みる研究を進めている。
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