2010 Fiscal Year Annual Research Report
末梢リンパ球とタンデムマスを用いた簡便な脂肪酸代謝異常症酵素診断法の確立
Project/Area Number |
22790983
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
虫本 雄一 島根大学, 医学部, 助教 (90467712)
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Keywords | 脂肪酸代謝異常症 / タンデム質量分析計 / 新生児マススクリーニング / 先天代謝異常症 / 酵素活性 / 遺伝子解析 / 脂肪酸β酸化 |
Research Abstract |
1)線維芽細胞からリンパ球を用いた脂肪酸β酸化能評価への応用 採血された末梢血よりリンパ球を分離し、1wellあたり3×10*6個に調整する。パルミチン酸又はオクタン酸を加えた培養液で120時間培養後、上清を用いてタンデムマスによるアシルカルニチン分析を行った。2010年度は、中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症2名、極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症2名、グルタル酸血症2型(GA2)4名の解析をおこなった。コントロールと比較して、MCAD欠損症ではC6、C8が、VLCAD欠損症ではC14:1が、GA2では短鎖から長鎖のアシルカルニチンの蓄積がみられ、皮膚線維芽細胞と同様に診断が可能であることが確認できた。 2)スクリーニングで発見された軽症例、非典型例の脂肪酸β酸化能評価 上記の症例のうちMCAD欠損症1名、VLCAD欠損症1名、GA2 1名については新生児マススクリーニング(MS)発見例であり、本方法はMSの補助診断としても有用であった。MCAD欠損症については保因者3名についての解析も行なったが、C8単独の指標に加え、C8/C10等のアシルカルニチン比をみることでコントロールやMCAD欠損症患者と優位な差を認めた。その他、GA2の1例では41歳発症の非典型の症例であった。GA2の遅発型では酵素活性が比較的保たれており、診断が難しい症例があることが分かった。このような症例ではアシルカルニチンの比をみながら総合的に判断する必要があった。 末梢リンパ球を用いた脂肪酸β酸化能評価では、皮膚線維芽細胞を培養する時間を短縮でき、侵襲も少ないメリットがある。今後は対象疾患・症例数を増やし、可能であればより精度の高い評価のための培養条件についても検討を行っていく予定である。
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