2011 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性腸疾患の病態におけるガレクチンの免疫調節機能とその治療戦略
Project/Area Number |
22791003
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
工藤 孝広 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90365601)
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Keywords | 炎症性腸疾患 / ガレクチン / サイトカイン |
Research Abstract |
【背景・目的】β-ガラクトシドに親和性のあるペプチド配列を分子内に有することで定義される一連の蛋白質であるGalectinは、免疫細胞の恒常性や炎症の調節、がん転移などに重要であることが示唆されている。哺乳類では15種類が存在しているGalectinの中でGalectin-1(Gal-1)、Galectin-3(Gal-3)、Galectin-9(Gal-9)は、感染症や自己免疫疾患などの炎症性疾患の病態への関与についても報告されているが、未だ不明な部分も多い。今回、小児炎症性腸疾患(IBD)腸管粘膜におけるGal-1、Gal-3、Gal-9の発現について検討した。【方法】対象は初発IBD患児22例(Crohn病10例、潰瘍性大腸炎12例)と正常対照延べ24例。下部消化管内視鏡検査中に粘膜生検にて、Crohn病では回腸末端、潰瘍性大腸炎ではS状結腸、正常対照では両部位の粘膜を採取した。生検した粘膜からcDNAを抽出し、real time-PCRにてGal-1、Gal-3、Gal-9、GAPDHの発現を測定、比較検討した。【結果】炎症粘膜におけるGal-1の発現は、Crohn病、潰瘍性大腸炎において、両者とも発現増加傾向であったが、正常対照と比較し有意差を認めなかった(CD; p=0.507,UC; p=0.153)。Gal-3の発現は、Crohn病、潰瘍性大腸炎において、両者とも発現低下傾向であったが、正常対照と比較し有意差を認めなかった(CD; p=0.268,UC; p=0.063)。Gal-9の発現は、Crohn病において有意に高かった(p=0.009)が、潰瘍性大腸炎において差はなかった(p=0.244)。【考察】Gal-3は炎症性腸疾患の上皮細胞において発現が低下していたとの報告があるが、本検討では有意差を認めなかった。Gal-9は、Tim3の介して過剰なTh1細胞や好酸球を抑制しており、炎症抑制に関わる蛋白であることが報告されているが、今回の検討ではCDの回腸末端粘膜においてGal-9の発現が有意に高かった。炎症が惹起されている局所粘膜において、さらなる炎症の波及を抑制している可能性がある。【結語】Gal-9はCrohn病の病態に関与しており、Gal-9がCDの活動性を抑制することが示唆され、今後治療法の選択肢の1つになる可能性があると考えられた。
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