2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘモグロビンクラススイッチの解明とヘモグロビン異常症の新しい治療戦略の基礎的研究
Project/Area Number |
22791007
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
早川 潤 日本医科大学, 医学部, 講師 (10386196)
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Keywords | ヘモグロビンクラスウィッチ / 造血幹細胞 / 臍帯血 / 胎児型ヘモグロビン / ヘモグロビン異常症 |
Research Abstract |
本プロジェクトの2年目として23年度は22年度に我々が報告した論文(The assessment of human erythroid output in NOD/SCID mice reconstituted with human hematopoitetic stem cells,Cell Transplant 2010)をもとに、ヒト化免疫不全マウスの体内で移植したヒト臍帯血がヘモグロビンクラススイッチを起こすことでそのヘモグロビン分画の解析を進めようとした。しかしその後、欧米からの報告が相次ぎBCL11A、KLF1、MYB、SOX6、HDAC1/2といった遺伝子群がヘモグロビンクラススイッチを制御する重要な因子であることが判明した。どの報告も最終的にヘモグロビンクラススイッチの制御をin vivoで実現することを目標にする我々にとって重要な報告であるが、in vitroでのシグナル伝達を証明した報告であり、我々のもつin vivoの系を用いて、これらの造血因子を制御することでHbFを人工的に増加させてヒトへの臨床応用を実現することができるかに今後の目標が発展した。 造血幹細胞を用いたerythroid系への分化誘導の実験系を導入するため、ヘモグロビン分画を解析する電気泳動装置、造血幹細胞からerythroid系への分化誘導するための各種血清、サイトカイン、それをフローサイトメーターで解析するための各種抗体を購入し、造血幹細胞から18日間でEyrthroid系細胞に分化していく様子をCD71、GPA抗体で確認した。我々は細胞分離する時に高速細胞分離器(バンテージなど)を持っていないため、MACS BeadsでCD71、GPA陽性細胞を選択する手法を導入した。今後はヒト臍帯血を用いるため、大学倫理委員会に申請する臍帯血を使用するための書類制作に従事した。 さらに我々の研究室で新たに購入したサイトカインアレーを用いて網羅的に少量の検体で血清中のサイトカイン濃度を測定することが可能になったため、学内倫理委員会の承諾を得た後に、骨髄にストレスがかかる骨髄異形成症や再生不良性貧血などの無効造血を繰り返し徐々に血液分化障害をともなう疾患とITPやウイルス感染に伴う血球貪食症などの感染で急激に血液分化障害を起こした患者の血清サイトカインを比較することによるerythroid系分化への影響や、異常分娩でうまれた児の臍帯血と正常分娩で生まれた児の臍帯血を比較することでHbFの発現やerythroid系細胞への分化の状況を解析することの検討を始めるよう準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
欧米からBCL11A、KLF1、MYB、SOX6、HDAC1/2といった遺伝子群がヘモグロビンクラススイッチを制御する重要な因子であるという報告が相次ぎ、我々の研究計画の一部修正を余儀なくされた。ヒト造血幹細胞をNOGマウスに移植する動物実験を進める準備をしたが、実験動物の飼育環境や実験計画が一部変更になり、動物実験の計画に遅れが出た。また様々の出生条件の臍帯血を解析する実験ではなかなか検体が確保できず、検体収集が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はヘモグロビンクラススイッチを制御する重要な遺伝子群に標的を絞り込み、我々が準備をしてきたNOGマウスを用いたヒト臍帯血を移植する実験系を活用することで、in vivoでも人工的なクラススイッチの実現を達成するという、より具体的な目標に焦点をあてて研究することにする。新規に導入されたサイトカインアレーを活用し、造血ストレスがある状況でのヘモグロビン分画の変化、血清サイトカインアレープロファイルを測定し、臨床所見と比較することで病状の把握とerythroidの造血との因果関係をさぐり、病態解明を目指し本プロジェクトでの一定の成果を報告し、次年度からの新しい研究課題の方向性を模索したい。
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