2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト遺伝子導入マウスiPS細胞由来の樹状細胞を用いた慢性肉芽腫症の病態解析
Project/Area Number |
22791021
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
河合 利尚 独立行政法人国立成育医療研究センター, 成育遺伝研究部, 室長 (20328305)
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Keywords | 慢性肉芽腫症 / 肉芽腫性腸炎 / 食細胞 / NADPHオキシダーゼ / iPS細胞 |
Research Abstract |
本研究は、慢性肉芽腫症(CGD)における過剰免疫反応に伴う炎症の遷延化に関する病態を解明することを目的とする。そこで、CGD患者の末梢血リンパ球解析および細胞機能解析を行い、臨床経過と合わせて検討を行った。炎症性腸疾患(IBD)に類似した慢性腸炎はCGDの約50%に発症するが、過剰免疫に起因する慢性炎症(腸炎)の機序については不明である。一般にIBDの頻度が0.5-1/10万人であることから、CGDにおける慢性腸炎がCGDの病態と深く関連することが推測される。当施設のCGD症例40例において、CGD腸炎の頻度は35%で、好発年齢は10歳未満であった。CGD症例のリンパ球解析では、CD3+中のCD4+CD45RA+CD31+recent thymic emigrant(naive T細胞)の割合は加齢にともない急激に低下しており、これがCGD腸炎の発症時期に影響している可能性が示唆された。また、CGDで低下する活性酸素種(ROS)は細胞内炎症シグナルとしての役割をもつ。そこで、末梢血から分離した単球について炎症性サイトカイン産生能、caspase-1活性化、NF-κB活性化等について検討を行ったが、明らかな機能低下は認めなかった。しかし、感染症に罹患しないCGD症例でも、血清炎症性サイトカインは高値を示した。今後、生体内免疫応答と生体外細胞機能解析との解離について更なる検討が必要と考えられた。 また、近年、遺伝子変異と臨床的予後の相関に関する報告がなされ、免疫異常に与える遺伝的素因の重要性が再認識された。そこで、免疫担当細胞であるマクロファージや樹状細胞の疾患特異的変化を明らかにする為に、CGDマウス由来iPS細胞へCGDの責任遺伝子であるヒトCYBB遺伝子を導入し、ヒトCYBB遺伝子発現CGDマウスiPS細胞を樹立した。しかし、in-vitroでは均一な細胞の分化がえられなかっため、分化誘導した好中球から活性酸素は産生されなかった。そこで、マウスへ移植し生体内で細胞の分化誘導を行い、機能解析を行う準備をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
慢性肉芽腫症の病態を解析する為に、当初炎症に関与するキヌレニン経路の異常を想定したが、その後、複数の報告からキヌレニン経路の関与は否定された。そこで、患者単球のNLRP3インフラマソームなど細胞内炎症シグナルに注目し患者細胞の解析を行ったところ、興味深い結果がえられた。また、樹立したヒトCYBB遺伝子発現CGDマウスiPS細胞から分化誘導した細胞の機能解析では、現段階でヒトCYBB遺伝子の作用が確認できていない。そこで、誘導方法を変更し、機能解析を行っている。本研究においてiPS細胞に関する検討はやや遅れているが、慢性肉芽腫症の病態解析については一定の成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していたキヌレニン経路の検討と異なり、CGD患者末梢血における残存活性酸素産生能と免疫担当細胞の炎症シグナル、サイトカイン産生能など細胞機能解析については末梢血単核球を用いて検討することが可能であるため、今後も検討をすすめる。また、患者末梢血単球機能解析とともにiPS細胞を用いたマクロファージや樹状細胞の機能解析により、さらに生体内のメカニズムを明らかにすることが可能と考える。これまで本研究で樹立した、マウスiPS細胞へヒトCYBB遺伝子を導入したヒトCYBB遺伝子発現CGDマウスiPS細胞を用いた病態解析システム構築の可能性について、検討をすすめる。
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