2011 Fiscal Year Annual Research Report
概日リズム発達における母獣と光の役割~幼若型から成熟型への移行スイッチは何か~
Project/Area Number |
22791030
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
坂田 ひろみ 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (50294666)
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Keywords | 概日リズム / 脳発達 / ラット / 深部体温 / 視交叉上核 / Per1 |
Research Abstract |
本研究では、ラット仔の深部体温リズムが母獣との分離(離乳)を境に急激に変化する現象の機序を明らかにすることを目的とし、母獣による授乳・育仔時間を明期のみに制限したモデルと暗期のみに制限したモデルとの間で、乳仔期における深部体温および活動量の概日リズムの相違、時計遺伝子Per1発現リズムの相違を調べた。生後13日から18日まで母獣との同居時間を明期の12時間(L群)、または暗期のみの12時間(D群)に制限し、深部体温変化を観察した。D群では体温が暗期に高く明期に低い、成獣と類似したパターンを示したが、L群では体温が明期に高く暗期に低い、反転したパターンであった。さらに、L群では、乳仔期にみられる明期直前の一過性体温低下がより顕著になったのに対し、D群ではこの体温低下現象が消失していた。このことより、哺乳期ラットに特徴的な明期開始時の一過性体温低下には、摂食および摂食リズムが深く関わっている可能性が示唆された。さらに、生後18日に概日リズム中枢の視交叉上核(SCN)における時計遺伝子Per1発現リズムを調べたところ、発現のピークがD群では対照群同様明期であったが、L群では暗期に移行した。ラット成獣では食餌リズムを変化させてもSCNのPer1発現リズムは変化しなかった。発達途上のラットでは、SCNリズムが明暗リズムより哺乳リズムに同調する可能性が示された。また、L群ラット仔はD群と比較して体重増加が有意に高かった。これらのラットを離乳後、餌および水を自由摂取させて飼育したが、L群とD群との間の有意な体重差は成熟後も維持された。また、L群ラットでは成熟後の活動量がD群および対照群と比較して有意に高く、多動になっている可能性が示唆された。以上の結果から、脳発達期の摂食リズムを乱れが子どもの概日リズムの発達に重大な影響を与え、その影響は成熟後も続く可能性が示唆された。
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