2011 Fiscal Year Annual Research Report
バピヨン・ルフェーブル症候群表皮細胞におけるセリプロテアーゼの活性化障害
Project/Area Number |
22791048
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
滝吉 典子 弘前大学, 医学部附属病院, 助手 (30568895)
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Keywords | 表皮細胞 / 角化 / 遺伝性疾患 / セリンプロテアーゼ / 掌蹠 / 遺伝子変異 / 癌 / メラノサイト |
Research Abstract |
バピヨン・ルフェーブル症候群は掌蹠角化、易感染性、歯周囲炎、を特徴とする比較的まれな常染色体性劣性遺伝病であり、その原因は多種のセリプロテアーゼの活性化を担うカテプシンCの欠損である。申請者のグループは本症を数例経験し、そのカテプシンC遺伝子の変異を解析している。この酵素カテプシンCは、好中球やマクロファージに多く存在し、エステラーゼやグランザイムといったセリプロテアーゼを活性化するので、本酵素が欠損するバピヨン・ルフェーブル症候群で、易感染性が生ずることは簡単に理解できる。しかし、本症に見られる掌蹠角化の発症機構を解明した内外の報告はない。今回の研究では本症の表皮細胞に生じている分化異常が、TGF-βの発現やシグナルの異常を引き起こし、メラノサイトの癌化を促進しているのではないかと考えた。本研究では、バピヨン・ルフェーブル症候群の原因であるカテプシンCの欠損が角化細胞の脱落を障害し過角化を引き起こしているか、TGF-βの発現やシグナルの異常を誘導して黒色腫の発生に関与するのか、という2つの仮説の検証を行っている。昨年度に作成したカテプシンCのリコンビナント蛋白を培養表皮角化細胞であるHaCaTの培地中に加えたところ、HaCaTの細胞質内のカリクレイン(KLK)が活性化されることがわかった。さらに、我々はカテプシンCのノックアウトマウスを作成。発癌実験においては野生型マウスとの差は現時点では得られなかったが、TPAを皮膚に塗布すると野生型マウスよりも表皮の過角化が亢進することが組織学的に明らかとなった。以上の結果は、カテプシンCの欠損によるセリプロテアーゼの活性化障害が引き起こされ、皮膚の角化が亢進するという我々の仮設を支持するデータと考える。
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