2010 Fiscal Year Annual Research Report
PI3キナーゼ阻害剤を用いた新たな慢性アレルギー性皮膚炎の治療法の開発
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22791094
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
黒田 悦史 産業医科大学, 医学部, 講師 (10299604)
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Keywords | PI3キナーゼ経路 / 好塩基球 / 慢性アレルギー性皮膚炎 / Th2サイトカイン / 脂質メディエータ |
Research Abstract |
遅延型のアレルギー疾患である慢性アトピー性皮膚炎の発症には、好塩基球の関与が示唆されている。最近我々は、好塩基球の活性化はPI-キナーゼが重要であることを見いだした。そこで本研究では好塩基球が介在する皮膚炎モデルを用いて、PI3-キナーゼ経路の重要性についてin vitroおよびin vivoにおけるにおいて評価した。 実験1)マウス骨髄細胞からマグネティックソーティング法にて好塩基球を単離した。得られた好塩基球を抗原と抗原特異的IgE抗体とで刺激し、アレルギー関連サイトカインであるIL-4やIL-13、脂質メディエータであるプロスタグランジン、ロイコトリエンの産生をELISA法にて評価した。PI3-キナーゼ阻害剤であるワートマニンやLY294002にて好塩基球を処理することでTh2サイトカインや脂質メディエータの産生は有意に低下した。また、PI3-キナーゼ経路の下流のシグナル伝達体であるmTORの阻害剤であるラバマイシンも同様に液性因子の産生を抑制した。 実験2)好塩基球依存性の慢性アレルギー性皮膚炎モデルマウスを作成した。このモデルマウスにPI3-キナーゼ経路阻害剤であるLY294002を経口投与し、慢性アレルギー性皮膚炎の病態が改善されるか否かを、皮膚の腫脹を測定することにより評価した。その結果、LY294002非投与群に比べ、LY294002投与群において、皮膚の腫脹は有意に低下した。 以上の結果から、PI3-キナーゼ経路は好塩基球からのTh2サイトカインや炎症に関与する脂質メディエータの産生に関与することが明らかになった。さらにPI3-キナーゼやその下流のシグナル伝達の阻害は好塩基球を介したアレルギー炎症の制御と治療に有用であると考えられた。
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