2011 Fiscal Year Annual Research Report
PI3キナーゼ阻害剤を用いた新たな慢性アレルギー性皮膚炎の治療法の開発
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22791094
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
黒田 悦史 産業医科大学, 医学部, 講師 (10299604)
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Keywords | PI3キナーゼ経路 / 好塩基球 / 慢性アレルギー性皮膚炎 / Th2サイトカイン / 脂質メディエータ / KOマウス |
Research Abstract |
遅延型のアレルギー疾患である慢性アトピー性皮膚炎の発症には、好塩基球の関与が示唆されている。昨年までの本研究において、PI3キナーゼ阻害剤の投与は好塩基球が介在する慢性アレルギー性皮膚炎の発症を抑えること、さらにPI3キナーゼ阻害剤が好塩基球からの脂質メディエータやTh2サイトカインの産生を抑制することを見いだした。そこで本年度は慢性アレルギー性皮膚炎を誘導する好塩基球由来因子の特定を試みた。 実験1)マウス好塩基球を抗原と抗原特異的IgE抗体とで刺激し、アレルギー関連サイトカインであるIL-4やIL-13、脂質メディエータであるプロスタグランジン、ロイコトリエンの産生をELISA法にて評価した。PI3-キナーゼ阻害剤は好塩基球からのTh2サイトカインやロイコトリエンB4およびC4、さらにプロスタグランジンD2の産生を強く抑制した。 実験2)Th2サイトカインのシグナル伝達体であるSTAT6の欠損マウス、ロイコトリエンB4の受容体であるBLT1欠損マウス、さらにプロスタグランジンE2およびD2の合成酵素であるmPGES-1欠損およびhPGDS欠損マウス用い、好塩基球依存性の慢性アレルギー性皮膚炎モデルを作成した。興味深いことにどの欠損マウスも野生型マウスと同等に皮膚炎を発症した。さらに、野生型マウスにロイコトリエンC4の受容体拮抗剤や、プロスタグランジン合成阻害剤を投与し、皮膚炎の解析を行ったが、どちらの薬物の投与でも皮膚炎の病態の改善は認められなかった。 以上の結果から、PI3-キナーゼ経路は好塩基球による皮膚炎発症に重要なシグナル伝達経路であるが、PI3-キナーゼ経路によって制御されているTh2サイトカインや脂質メディエータの産生は皮膚炎の発症には関与しないことが明らかになった。
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