2011 Fiscal Year Annual Research Report
抗うつ療法が酸化ストレスマーカーおよび脳由来神経栄養因子に及ぼす効果
Project/Area Number |
22791117
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
玉置 寿男 山梨大学, 医学部附属病院, 助教 (60345709)
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Keywords | 気分障害 / 痴呆 / 脳・神経 / 酸化ストレス / 神経新生 |
Research Abstract |
平成23年度の研究実施計画に沿って,入院時に50歳以上のうつ状態の患者から文書で同意を得て,抗うつ療法(mECT,TMS,薬物療法)の前後に以下の検査を実施した. 末梢血採血:血清中8-OHdG,血清中8-OHG,血清抗酸化能,血清BDNF濃度,Apolipoprotein E遺伝子型(治療前のみ) うつ病評価尺度:HRSD,GDS 認知機能テスト:MMSE,CDR,WMS-R,WCST,Verbal Fluency Test 脳画像検査:脳MRI(VSRAD),脳血流SPECT(eZIS)・ 平成23年度には10例を研究対象としてエントリーした.治療後の諸検査が施行できなかった1例を除き,9例で治療前後の各種検査を施行できた.末梢血採血によって得られた血清については,各種測定キットを用いて血清中8-OHdG,血清中8-OHG,血清BDNF濃度の測定を行い,平成22年度のデータと合わせて統計学的な検討を行った.血清BDNF濃度に関してはうつ病相期とうつ病寛解期で有意な変化は認められず,血清BDNFとうつ病評価尺度との間にも有意な相関は見られなかったが,血清BDNFと血清コリンエステラーゼとの間に有意な正相関が認められた(うつ病相期p<0.03,寛解期p<0.001,寛解前後の変化量p<0.02).他にも血清BDNFと総蛋白(寛解前後の変化量p<0.02),アルブミン(寛解前後の変化量p<0.04),ヘモグロビン(うつ病相期p<0.04,寛解期p<0.03)との間に正相関が認められた.この結果は,血清BDNFが栄養状態と並行して推移している可能性を示している.他方,神経系の実験研究では,BDNFによるコリンエステラーゼの発現調節やコリン径神経伝達によるBDNFの発現調節が報告されており,末梢血中のBDNFとコリンエステラーゼの相関に神経系で示唆されているような直接的な関連性があるかどうか今後の検討を要する.
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