2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22791129
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平野 羊嗣 九州大学, 医学研究院, 学術研究員 (90567497)
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Keywords | 統合失調症 / 聴覚情報処理 / 聴覚-視覚情報統合 / 幻聴 / 脳磁図 / 時間周波数解析 |
Research Abstract |
統合失調症患者は様々な認知に関連した障害を併せ持つことが知られており、その中でも患者の正常な社会認知を妨げる大きな要因の一つが幻聴である。また統合失調症患者は、顔貌認知の障害も顕著であることが報告されており、幻聴と顔貌認知障害は結果的に患者の社会生活全般を脅かし、患者の予後をも左右する。これらの認知機能障害の客観的評価は極めて困難で見逃すことも多いため、治療開始時期や予後に対しても多大な影響を及ぼす。実際に多くの難治例の統合失調症患者に、重度の幻聴と顔貌認知障害を認めることも知られている。本研究の目的は、全頭型脳磁図を用い、幻聴を有する統合失調症と健常者を対象とし、言語音に対する脳内の聴覚情報処理障害の神経学的基盤と幻聴の発生機序との関連を明らかにするとともに、視覚情報(顔刺激)が幻聴時の聴覚情報処理機構に及ぼす影響を明らかにし、客観的に評価することにある。 具体的には、(1)統合失調症患者25名と健常者24名を対象に、聴覚刺激(言語音)と視覚刺激(顔)を、個々もしくは同時に提示した際の各感覚処理機構の神経活動とその統合様式の違いを、時間周波数解析を用いて検索した。さらに、(2)幻聴を有す患者群の中でも、幻聴のon/offの判別が可能な8名について、幻聴のon状態とoff状態での言語音に対する聴覚情報処理機構の違いを、時間周波数解析を用いて調べた。最終的な結果は、(1)健常者に比べ幻聴を有する統合失調症患者では、聴覚(言語音)情報処理障害に加え、聴覚情報と視覚(顔)情報の統合が障害されていることがわかった。(2)幻聴のon状態ではoff状態に比べ、言語音に対する聴覚情報処理機構が顕著に障害されていることを見いだした。つまり本研究により、幻聴に起因する統合失調症患者の聴覚-視覚情報の統合障害の存在を発見するとともに、幻聴が認知機能ならびに脳活動に及ぼす影響をダイレクトかつ客観的に検出することに成功したといえる。
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Research Products
(11 results)