2010 Fiscal Year Annual Research Report
前頭側頭葉変性症における抽象的態度の障害の神経基盤の研究
Project/Area Number |
22791131
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小川 雄右 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (50535573)
|
Keywords | 抽象的態度 / 前頭側頭葉変性症 / 神経基盤 / 神経科学 / 神経心理学 |
Research Abstract |
抽象的態度の障害とはGoldsteinが提唱した概念で、与えられた事物の具体性にとらわれて、その一般的、抽象的概念を洞察できなくなることである。この抽象的態度の障害が、前頭側頭葉変性症(FTLD)患者の呈する人格変化や行動障害を引き起こす一つの要因であるという仮説を立てた。本年度はまず、FTLD患者の抽象的態度を評価するため、「概念化課題」(5問)、「概数検討課題」(2問)、「状況想定課題」(3問)からなる「抽象化能力評価課題」を作成し、当院通院中のFTLDの11例、ADの14例に実施した。結果はFTLDではADに比べ正答できない症例の割合が全ての課題において有意に多かった。更に、具体的な個別の体験に固着する、全体を見ずに部分にこだわる、といった抽象的態度の障害によると考えられる所見が見られる症例の割合も、FTLDがADに比べ有意に多く、FTLDでは抽象的態度が障害されていることが示唆された。また、常同行動を評価するStereotypy Rating Inventory (SRI)と、今回作成した抽象化能力評価課題の成績との間に正相関傾向(p=0.08)を認め、FTLDの行動障害に抽象的態度の障害が関わっていることが示唆された。以上の結果を学会にて発表した。更に上記の対象に対し、Mini-mental state examination (MMSE)、Frontal assessment battery (FAB)を含む各種神経心理学的検査、Neuropsychiatric Inventory (NPI)を含む行動神経学・神経精神医学的検査、頭部MRI、脳血流SPECTを実施し、データベースに登録した。
|