2011 Fiscal Year Annual Research Report
前頭側頭葉変性症における抽象的態度の障害の神経基盤の研究
Project/Area Number |
22791131
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小川 雄右 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (50535573)
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Keywords | 抽象的態度 / 前頭側頭葉変性症 / 神経基盤 / 神経科学 / 神経心理学 |
Research Abstract |
抽象的態度とは「ある刺激の持つ一般的、抽象的属性を洞察する能力」であり、抽象的態度が障害されると、自身を客観的にみることができなくなると予想される。そこで今年度は、前頭側頭型認知症(FTD)、意味性認知症(SD)それぞれにおいて、自身の症状に対する認識と抑うつとの関係を検討した。当院通院中のFTD15例、SD17例に対して、GDS、Neuropsychiatric Inventory (NPI)を用いてうつ、アパシーの頻度・重症度を調べ、さらに自身の症状に関わる機能低下の訴えがある場合を病感ありとして、うつ、アパシー、病感の関係を分析した。結果は、GDSによるうつの重症度はSDがFTDに比べ有意に高かった。アパシーの重症度は、FTDがSDに比べ有意に高く、FTDにおけるアパシーの有症率は93.3%と高率だった。病感については、FTDでは、病感を有する患者は1例もなかったのに対して、SDでは約2/3の患者が病感を有していた。SDにおいて、病感を有する患者では病感のない患者と比較し、GDS得点が有意に高かった。これらの結果は、SDでは自身の能力低下を自覚しているために、反応性にうつを呈すると考えられた。さらに、FTDはSDよりも自身を客観的にみる能力、すなわち抽象的態度がより強く障害されており、FTDの主たる萎縮部位である前頭葉が抽象的態度に関わっている可能性が示された。 また昨年度から引き続き、抽象的態度評価課題として作成した「概念化課題」、「概数検討課題」、「状況想定課題」、及び常同行動の評価尺度であるSRIをFTLDに対して実施し、FTLDでは抽象的態度が障害されていること、抽象的態度の障害が認知の側面のみならず意思決定にも影響し、その結果常同行動のようなFTLDに特徴的とされる行動障害が引き起こされていることを示し、論文にて報告した。
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