2011 Fiscal Year Annual Research Report
新しい薬物治療を目指した神経性食欲不振症の病態でのグレリンとCRFの役割の解明
Project/Area Number |
22791144
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
眞野 あすか 日本医科大学, 医学部, 講師 (50343588)
|
Keywords | ストレス / 生理学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
本研究では非ストレス時やストレス負荷に対する視床下部の反応性におけるCRFとグレリンの役割について明らかにするとともに、神経性食欲不振症の病態におけるこれらペプチドの関与を明らかにすることを目的としている。 本年度は内因性のグレリンの作用を阻害し、摂食行動の変化について検討を行った。グレリン受容体拮抗薬を脳室内へ投与し、投与後90分間の摂食量を測定したところ、生理食塩水投与群と拮抗薬投与群との間に差は認められなかった。グレリンの血中濃度は摂食前に上昇し、摂食により低下することが知られており、体内のエネルギー容量に依存して摂食を調節すると考えられることから、この結果は非ストレス下においてグレリンは摂食を持続的には調節していないことを示唆している。 次に昨年度行ったストレス下におけるグレリンの摂食促進作用について更なる検討を行った。ストレス後にグレリンを投与した群では、ストレスによる摂食抑制が解除されており、さらに非ストレス下にグレリンを投与した群と比較しても有意に摂食量が増加していたことが明らかとなった。これは予想された結果とは異なっており、この機序を明らかにする目的で90分の拘束ストレスの後、グレリンを脳室内へ投与し90分後に灌流固定して脳内のFos発現について解析した。ストレス後にグレリンを投与した群の視床下部室傍核におけるFos発現は、非ストレス下にグレリンを投与した群と比較して有意に増加していた。しかしながらストレス後に生理食塩水を投与した群と比較するとFos発現は少ない傾向を示したことから、ストレスにより活性化するニューロンの活動をグレリンが抑制する可能性が推測された。 この結果は神経性食欲不振症患者ではグレリンによる摂食促進作用が認められることと一致しており、ストレスによる摂食抑制をグレリンが解除する機序を解明することで、神経性食欲不振症の病態の一部が明らかになることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予想されていた結果と異なる結果が得られたため、研究の進展に必要な文献検索や予備実験に時間を費やしてしまったことが遅れている理由であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果からグレリンはストレスを緩和する作用があることが推測されるので、グレリンがどのようにしてストレスによる神経活動を抑制するのかについて明らかにするため、グレリン受容体の機能を抑制した動物を使用してストレスによる摂食行動の変化やニューロン活動の変化について検討し、これらに変化が認められた場合にはCRFファミリーペプチドやその受容体の遺伝子発現について解析を行う。以上のことを遂行することが本研究課題の目的の達成へ繋がると考える。
|