2011 Fiscal Year Annual Research Report
放射線照射後の腫瘍細胞の遊走能亢進作用に対するゲフィチニブの抑制効果の検討
Project/Area Number |
22791168
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Research Institution | 埼玉県立がんセンター |
Principal Investigator |
佐藤 友美 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 研究員 (70511484)
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Keywords | 遊走能 / ゲフィチニブ / 肺癌 |
Research Abstract |
EGFR変異有無によるヒト非小細胞肺癌細胞の放射線照射による細胞遊走能の変化とTKI(ゲフィチニブ)併用による、細胞遊走の抑制効果の検討 EGFR遺伝子の異なるヒト非小細胞肺癌由来の細胞株(A549;wild type,HCC827;mutant type)に、X線照射とゲフィチニブを併用し、wound healing assay法で放射線線量依存性、薬剤投与量依存性、両者併用による変化を検証し、HCC827ではゲフィチニブ併用した群で有意に遊走が抑制されることを確認。Westernblot法により遊走と関連のあるMAPK系タンパクとしてERKの発現量を確認し、遊走抑制のあるHCC827のゲフィチニブ投与群で発現の低下を認めた。HCC827対象とし、遊走能の低下を時間的経過で観察したところ48時間以後は、細胞の遊走抑制だけでなく、細胞の接着低下を認めた。接着能の抑制、および細胞死の関与なのか、遊走因子以外について検討した。HCC827の生存程度を確認するためWST-1法を用いた。24、72時間では変化を認めず、7日経過で生存の低下を認めていた。 westernblot法のアポトーシス発現としてcPARPを確認した。照射後2時間でHCC827ではcPARPの発現増加を確認できたが、A549では明らかではなかった。TUNEL染色では24、48、72時間とアポトーシス変化に違いは認められなかった。 今回のこの結果から、ゲフィチニブはEGFR遺伝子変異のある細胞には遊走能シグナル系を抑制し、早期に遊走および接着能を低下させていた。細胞内の変化として、早期にアポトーシス反応を示すが、細胞死となり変化として認められるのに7日間は要していた。今回の早期の遊走能低下は細胞死効果よりも、遊走シグナルの抑制が強く関与していると考えられた。mutationのない細胞では効果が乏しく、選択的な効果発現を期待でき、正常細胞への影響は乏しいと考えられた。遊走抑制が早期に起こる点は、早期の転移抑制に有用な効果となる可能性が示唆され、その検証は今後の課題である。
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