Research Abstract |
脳虚血性疾患の病態を解明するため,放射性酸素-15(^<15>O)を用いた静注用^<15>O標識人工赤血球を開発し,この薬剤を急速投与法により生体内に投与して陽電子放射断層撮影による脳循環代謝測定を行ってきたが,多量の動脈採血が必要であり,動物の負担が増加したため,同日に同一動物を用いて実験することが困難であった.そこで,微量の動脈血で測定可能な持続投与法の利用を考えたが,一定量を持続的に投与する従来法では,投与量の増加が予想されたため,この従来法を改良し,動物の負担低減を目的とした新しい非侵襲持続投与法を考案した.今年度の研究では,本投与法の実現化を目的に^<15>O標識水を用いた正常ラットの脳血流量測定を検討した.本法は,急速投与法と連続的投与量増加法を組み合わせた手法であり,Excel内に組み込んだVisual basicを用いてプログラムを構築した.このプログラムを用いて^<15>O標識水を投与し,ラット体内の放射能を確認したところ,投与開始後2分に体内放射能が一定となり,脳画像上のノイズも低減されたことから,より正確な脳血流量が測定可能となったため,動物実験に最適な手法が確立でき,権威ある雑誌に掲載された(Kobayashi M et al. J Cereb Blood Flow Metab. 2011 ; 31 (2) : 527-531).また,動脈採血量が0.1mLと非常に微量となり,投与量においては,従来の持続投与法で1匹あたり2-3mL必要だったのに対し,本法では約1.2mLとなったため動物の負担が大変軽減された.加えて,測定時間も短縮されたが,今後の静脈注射用^<15>O標識人工赤血球を用いた研究には更なる短時間化が必要であったため,血液内放射能測定の迅速化を考え,膜型血漿分離機の使用を試みた結果,動脈血液内の放射能測定が短時間で行えたため,今後の研究に有用であると期待している
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