2010 Fiscal Year Annual Research Report
血管新生抑制剤、ガンマ線前照射の併用によるホウ素化合物の腫瘍内分布に及ぼす影響
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22791188
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
劉 勇 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (70511781)
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Keywords | BNCT / gamma-radiation / angiogenesis inhibitor / boron compound / mice |
Research Abstract |
背景及び目的:ホウ素中性子捕捉療法(BNCT : Boron Neutron Capture Therapy)は悪性腫瘍に対する有効な治療手段として注目されている。原理により、腫瘍細胞に隣接した正常細胞へ損傷を与えることなしに、腫瘍細胞を選択的にかつ強力に破壊することが可能である。悪性腫瘍組織内のホウ素化合物の分布はそのBNCTの効果を左右する重要な因子の一つである。ホウ素化合物のミクロ分布や集積量は血流状態にも大きく支配されると考えられる。しかるに、腫瘍血管構造は異常で血流には不均一があり、ホウ素化合物を全ての癌細胞へ分布させる事には困難がある。一方で、X線照射、血管新生抑制剤による腫瘍血管新生への影響が報告された。そこで、本研究ではガンマ線前照射、血管新生抑制剤Avastinのホウ素化合物の濃度と分布に対する影響を検討した。材料と方法:扁平上皮癌(SCCVII)を下肢に有するマウスの腫瘍を5, 10, 20Gyのガンマ線で照射した。ガンマ線照射3時間から96時間後に行った腫瘍組織の摘出の30分前にホウ素化合物BSH(75mg/kg, i. p. )を投与した。BNCTを施行し、腫瘍細胞の生存率をコロンニー形成法で調べた。まだSAS、U87-MG細胞を用いた。BPA(p-boronophenylalanine)を培地に加え、1時間培養した後、抗BPA抗体によって、免疫蛍光染色を行った。蛍光強度とBPAの濃度の関係を調べた。In vivoで、担癌マウス(SAS)に、Avastin(10mg/kg,i. p.)を投与し、また1日、7日後のサンプリング前の1時間にBPA(250mg/kg, i. p.)を投与し、1時間後に腫瘍組織を取った。腫瘍組織内の硼素濃度を即発ガンマ線分析装置で調べた。腫瘍内の血流及びBPAの分布を、Hoechst 33342 (16mg/kg, i. v.)まだBPA免疫蛍光染色よって検討した。結果:ガンマ線照射72時間後に腫瘍内のホウ素濃度は増加することが分かった。BNCTはガンマ線前照射と併用して、低い細胞生存率を得た。まだ、ガンマ線5Gy照射した72時間後に、Hoechstの腫瘍内の分布がよくなった。培養細胞の蛍光強度を測定すると、BPA濃度に応じて蛍光強度は増加することも分かった。Avastin処理の1日後に腫瘍内の硼素濃度は増加することが分かった。蛍光染色によって、Hoechst及びBPAの腫瘍内の分布がよくなった、しかし前照射なし、Avastin処理なし対照マウスと比べて、腫瘍サイズの顕著な変化を見つけなかった。結論:ガンマ線前照射、Avastin処理はある期間でマウス悪性腫瘍組織内のホウ素化合物濃度を上昇させ、その分布を改善することが確認された。ガンマ線前照射、血管新生抑制剤による腫瘍血管まだ腫瘍環境の変化はこの影響の一因と考える。本研究では、ガンマ線照射及び血管新生抑制剤(Avastin)による腫瘍の微環境、腫瘍血流の改善を介して、ホウ素化合物の腫瘍分布の均一化を図り、BNCTの効果の向上を期待する。
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Research Products
(6 results)