2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22791235
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
藤田 英俊 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 研究員 (90571802)
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Keywords | 炭素線 / 肺晩期障害 / 肺線維化 / 系統差 / MMP-9 / 放射線治療 |
Research Abstract |
放射線治療のひとつである重粒子線治療は、近年、高度先端医療として承認され治療が開始されている。肺がん治療においては、高齢者や低肺機能で手術適応のない患者に有効な治療法と考えられている。重粒子線照射による肺組織での炎症反応や正常組織への照射による有害事象が今後の課題となっているが、現在その詳細は明らかとされていない。本研究では,重粒子線治療に資する基礎研究として,マウス晩期障害実験モデルを用いて,重粒子線治療後の放射性肺炎および肺線維症の特徴を明らかとし、その発症メカニズムを解明することを目的とした。 炭素イオン線10Gyを2系統のマウス(C57Bl/6J,C3H/He)の肺に照射し経時観察を行った。 C57Bl/6Jでは照射後24週から肺の線維化が認められ、28週では5匹中5匹で線維化が観察された。一方で、C3H/Heでは24週で線維化が5匹中3匹観察されたが、28週では線維化が観察されなかった。この結果は、C57Bl/6Jは経時的に線維化が進行していくが、C3H/Heでは一過性に線維化が起こりその後改善されたことを示している。炎症細胞の流入を比較した結果、両系統とも肺への炎症細胞の流入が観察されたが、細胞の種類は異なっていた。肺の損傷において肺リモデリング遺伝子MMP,TIMPの発現バランスが重要であることが知られている。そこで、この2系統間でのMMP-2,MMP-9,TIMP-1の発現をリアルタイムPCRと免疫染色にて比較解析した。その結果、MMP-2,TIMP-1は線維化した肺での発現亢進が両系統で同様に認められたが、MMP-9の線維化部位における発現量は、2系統で大きく異なっていた。これらの結果は、線維化部位でのMMP-9の高発現が、肺線維症から改善するかしないかのポイントに重要であることを示している。
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