2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗体関連型慢性拒絶反応を回避するシグナル伝達経路の解明
Project/Area Number |
22791246
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩崎 研太 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (10508881)
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Keywords | 移植免疫 / 生体防御 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
【背景】抗ドナー抗体陽性移植では、抗体接着・補体活性が確認されるにも関わらず移植臓器が拒絶されず機能を維持しうる場合(accommodation)がある。しかしその獲得メカニズムは未だ不明であり、HLA抗体陽性腎移植・ABO血液型不適合腎移植ではグラフトの予後に明確な差がある。本研究では抗体接着後の内皮細胞内でのシグナル伝達、特に内皮細胞活性化を引き起こすERKと、生体防御に関するAKTに注目し、HLA・A/B抗体接着が内皮細胞に及ぼす影響について検討した。 【方法】ヒト臍帯静脈上皮細胞由来株EA.hy926用い、A/B型糖鎖高発現株を獲得した。細胞保護遺伝子はRT-PCR、補体制御因子の発現はフローサイトメトリー、AKT・ERKの活性はWestern blot、細胞障害はMTTアッセイにて評価した。【結果】HLA抗体、抗A/B抗体ともに、濃度依存的な補体による細胞傷害を認めたが、補体活性非存在下での24時間のpre-incubationによる細胞傷害の抑制(in vitro model for accommodation)が、低濃度のHLA抗体、高濃度の抗A/B抗体で認められた。抗A/B抗体接着では、補体制御因子CD55/59の2倍程度の発現上昇が見られたが抗HLA抗体接着では影響がなかったシグナル伝達の解析では、抗A/B抗体処理によるERKの顕著な活性低下、HLA抗体処理による活性上昇が濃度依存的に確認でき、ERKのインヒビター処理により補体制御因子の発現が上昇していたことから、ERKの不活性化が補体制御因子の発現に影響を与えていることが推察された。またAKTの活性化は、低濃度のHLA抗体処理にのみ見られた。【考察】抗A/BlgM抗体接着は、内皮細胞活性化の引き金となるERKを不活性し、それに伴う補体制御因子の発現を引き起こした。これはABO不適合移植において補体活性化と臓器廃絶が必ずしも連動しないことの一つの理由と考えられた。また、HLA抗体接着においては高濃度ほどERKの顕著な活性化が見られ、細胞保護効果を獲得しにくいことが推測された。ERKの活性化が抗ドナー抗体陽性移植でのaccommodation獲得の鍵となる分子であることが示唆された。
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Research Products
(4 results)