2011 Fiscal Year Annual Research Report
抗体関連型慢性拒絶反応を回避するシグナル伝達経路の解明
Project/Area Number |
22791246
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩崎 研太 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (10508881)
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Keywords | 移植免疫 / シグナル伝達 / 生体防御 / 転写因子 |
Research Abstract |
免疫順応(Accommodation)とは「移植臓器に対する抗体が存在するにもかかわらず、移植臓器が傷害をうけない状態」と定義される。これまで、異種移植、ABO血液型不適合移植で免疫順応が報告されてきた。一方HLAに対する抗体存在下での移植は、ABO不適合移植に比べると予後不良になる確率が高い。本研究では抗ドナー抗体陽性腎臓移植において、移植臓器が拒絶されない状態の確立法を目指している。これまでに、大動脈内皮細胞において一定量の抗HLA刺激でPI3K/AKT経路活性化に伴う転写因子Nrf2を介したサイトプロテクティブ遺伝子発現誘導を確認し、細胞保護が達成できることを見出した。一方、ABO不適合移植で見出される抗原抗体接着が引き起こす内皮細胞での研究は、AB糖鎖発現株の不在から世界でも研究が立ち遅れていたが、私どもが糖鎖発現株を樹立し詳細な研究を行う事で、ABO-、HLA-不適合移植における相違点を見出すことに成功した。そこでは免疫順応の一端がAB糖鎖に対する抗体接着によるERKの不活性化と、それに伴う補体制御因子の誘導であると明らかにした。(2012 Transplantation)またERKの阻害剤による補体制御因子CD55/CD59の発現上昇を確認した。このことは現在腎臓移植で観察されている、長期成績の違いがERKの活性化に起因している可能性を示唆しており、さらなる研究を進める必要性があると考えられた。
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