2010 Fiscal Year Annual Research Report
炎症と化学療法抵抗性との関連-胆道癌における解析と克服-
Project/Area Number |
22791279
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 省吾 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30452436)
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Keywords | 胆道癌 / 化学療法抵抗性 / 胆道炎症 / アポトーシス |
Research Abstract |
胆道癌は難治性の悪性腫瘍であり、切除が唯一の根治療法であるが、切除不能症例の占める割合が高い。その場合、治療法としては化学療法が選択されるが、殆どに胆道狭窄による黄疸を伴うため、ドレナージや胆道拡張術を施行しながら化学療法を行うことになる。それに伴い胆道感染が高率で発生するため、炎症をコントロールしつつ化学療法を継続する必要がある。こうした背景にある胆道癌は治療奏効率も低く、未だに有効な治療法は確立されていない。以上から、本研究では胆道癌における化学療法抵抗性に関して、胆道炎症をからめて探ることを目的とした。 まず、胆道癌細胞株に関して、胆道癌での使用が本邦で認可されているゲムシタビンと5FUに関して検討を行い、化学療法抵抗株と感受株に分類した。感受株については現在、獲得性化学療法耐性株を作成中である。これまでの研究では、抵抗株においてRBやSTATのリン酸化が進んでいること、胆道癌自体のアポトーシス抵抗性にはIL6が関与していること、抗IL6レセプター抗体を用いると、化学療法と共に細胞死を誘導することが可能であることが分かっている。ゲムシタビン感受株を用いた時の作用を検討したところ、p53のリン酸化とRBのリン酸化が進むことが分かった。さらに、胆道癌の発癌にはPTENとsmadが関与していることから、同じく化学療法抵抗性の関与と関係が深い可能性があり、smadの上流に位置する炎症性サイトカインによる化学療法抵抗性への関与にも着目して合わせて研究を進めている。この経路では他の抗癌剤に対する耐性も獲得することが分かった。 この研究から、胆道癌においても化学療法抵抗性が存在し、いくつかの細胞性シグナルと複数の炎症性サイトカインがそれに関与することがわかってきた。胆道炎症の制御が化学療法抵抗性に影響を与える可能性があり、臨床上非常に重要な意義があると考える。
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