2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト膵発癌を再現する遺伝子改変マウスを用いた早期膵癌マーカーの探索と治療法の開発
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22791291
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大村谷 昌樹 熊本大学, 大学院・先導機構, 特任助教 (60398229)
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Keywords | SPINK1/Sink3 / 膵癌 / 慢性膵炎 / X染色体不活性化 / 膵癌モデルマウス |
Research Abstract |
(目的)膵癌の早期診断方法や治療法開発のためのツールとして、発癌過程を忠実に再現したモデルマウスの解析が重要である。本研究課題では慢性膵炎モデルマウスを樹立し、慢性炎症から癌に移行する過程でどのような現象が起きているのかを明らかにする。(方法)慢性膵炎モデルマウスの樹立にはSpink3欠損マウス(Spink3-/-)を用いた。このマウスは膵腺房細胞に過剰なオートファジーが誘導され、出生後一斉に細胞死が起きて、膵外分泌機能不全によって死亡する。まずCAGプロモーター下にヒトSPINK1 (Spink3のホモログ)遺伝子をつなぎ(CAG-SP1)、マウスES細胞のX染色体に置換してマウスを樹立した(雌ではX染色体不活性化によって、約半数の細胞でのみSPINK1遺伝子がonとなる)。このマウスとSpink3-/-を交配した。(結果)Spink3-/- ; YX ; CAG-SP1(雄)およびSpink3-/- ; X ; CAG-SP1/CAG-SP1マウス(雌で両方のX染色体にCAG-SP1が挿入)は野生型と差が見られなかった。出生直後のSpink3-/- ; X ; CAG-SP1/+では正常な腺房細胞と著しい変性を生じた腺房細胞がモザイク状に混在しており、CAG-SPINK1がon/offの細胞が混在していることが確認された。このマウスは軽度の成長障害を示し、膵全体の萎縮、腺房細胞の脱落、膵実質の繊維化、膵管の拡張が顕著であり、ヒト慢性膵炎を再現していた。さらに拡張した膵管の上皮に過形成が見られ、ヒト膵癌の前癌病変と酷似していた。(まとめ)ヒト慢性膵炎のモデルマウスの樹立を行い、拡張した膵管の上皮は過形成(前癌病変)で、慢性炎症から前癌病変への移行を再現したモデルマウスの樹立に成功した。
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