2011 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍血管は消化管腫瘍の新たな診断基準となり得るか?
Project/Area Number |
22791304
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
北原 秀治 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40510235)
|
Keywords | 血管新生 / 腫瘍血管 / 消化管腫瘍 / 多段階発癌 |
Research Abstract |
腫瘍はその増殖のために、酸素や栄養分の供給が不可欠であり、様々な血管増殖因子群による複雑な分子経路を利用して血管新生を行っている。その血管新生のメカニズムの解明は、抗血管療法などの臨床治療において非常に重要である。われわれは、前年度に引き続き、腫瘍細胞が良性から悪性へと転化する点と、腫瘍血管、リンパ管の新生パターンが変化する点との間に、密接な相関関係が存在するのではないかと言う仮説を立て、それを実証するために三次元イメージング法を用いて解析した。大腸癌の原因遺伝子の一つであるApc遺伝子を変異させたApc^<Min/+>マウスに、高脂肪食と硫酸デキストランナトリウムを一定期間摂食させ、小腸に腺腫、腺癌を誘導させ、同一個体において、その変化の過程を解析した。経時的に蛍光トマトレクチンを静注して血管内面を標識し、灌流固定後に腫瘍を摘出して凍結切片を作製した。さらに、各種マーカーによる蛍光免疫染色を重ねて、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。また、電子顕微鏡による超微形態学的観察も行った。上皮が腫瘍化していく段階で、良性腫瘍(腺腫)においては、新生血管は著しく形態的変化を認め、密度を増し、基底膜の不安定化が起こっていた。微細構造では、絨毛先端の血管の内腔表面に微絨毛様の突起が出現するなどの変化が認められた。さらに、上皮が悪性化するにつれて、新生血管は密度を増し、形態的変化が著しく異型性を伴った。特に走行が無秩序になり、基底膜は多層化し、周皮細胞の形態も変化し、内腔側が不整形を呈した。転移性腫瘍を移植したモデルにおいても同様の結果を得た。また、血管新生因子であるVasohibin-2の発現が血管周囲に特異的に見られた。このように、腫瘍の悪性化を局所の微小循環系の変化との関連でとらえることが、臨床診断の上でも重要な指標となり、新たな治療戦略の開発につながるかもしれない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然は発癌モデルであるため、良性腫瘍から悪性腫瘍へと変化するために、長期間かかると思われたが、予定モデル数が順調に仕上がり、予定通り解析が行えた。また、科学研究費以外にも学内の競争資金の獲得が出来、試薬や動物購入が比較的容易にできた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、現データをまとめ、計画書にある通り、各所見をステージ分類し、臨床応用へとつなげる予定である。また、昨年度より共同研究を始めた、東北大学加齢医学研究所の佐藤靖史教授とも連携をし、悪性腫瘍に特異的な血管新生因子を抑制することで、消化管における発癌をふせぐ研究へと発展させる予定である。
|
Research Products
(2 results)