2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト肺線維症の進展における上皮間様転換機構と肺癌発生への関与
Project/Area Number |
22791315
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
波呂 祥 九州大学, 大学病院, 特任助教 (90546558)
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Keywords | 原発性肺癌 / 上皮間葉転換機構 / 肺線維症 / Brachyury |
Research Abstract |
1)肺線維症の肺癌発生への関与の検討に際し、原発性肺癌切除症例104症例より開始した。肺線維症合併した4症例は、非合併症例100症例と比較し、全生存期間は中央値93ヶ月に対し、41ヶ月と予後不良(p=0.0227)であることを確認した。次にEMT関連遺伝子Brachyuryに着目、mRNAおよびタンパクの発現に関してqPCR法による定量および免疫組織化学染色法にて検討した。同遺伝子のmRNA高発現症例は全生存率および無再発生存率が有意に低く(それぞれp=0.0254,0.0288)、リンパ節転移を介して予後不良となることが示唆されたが、肺線維症合併の癌部のmRNA発現量は、非合併症例の癌部と比較し、むしろ有意に低く(p=0.0043)、タンパクの発現の比較でも有意さは得られなかった(p=0.0532)。これらの解析結果からEMT関連遺伝子Brachyuryと肺線維症の予後不良の原因として関連づけることはできず、肺線維症における肺癌発生の過程には他のメカニズムが存在することが予想された。 2)次に肺線維症合併原発性肺癌切除症例2症例に関して、同一症例肺葉内の正常部、線維化部、腫瘍部の3カ所においてTGF-β1受容体、αSMAのタンパク発現、およびSmad2のリン酸化を免疫染色組織化学染色法にて検討を行った。TGF-β1受容体およびリン酸化Smad2は正常部、線維化部、腫瘍部の順に発現が高かった。またαSMAは正常部および腫瘍部に比較して、線維化部において発現が高く、腫瘍部においては発現が低下する結果を得た。今後定量等の検討が必要であるが、肺線維症合併原発性肺癌においては同一症例内での正常部、線維化部、腫瘍部のそれぞれにおいてTGF-βシグナルの程度の差を認め、線維化、癌化の過程にTGF-βシグナルが重要な役割を果たしていることが予想された。
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