2011 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子修飾した血管内皮前駆細胞(EPC)によるワクチン療法の開発
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22791332
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石川 栄一 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30510169)
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Keywords | 血管内皮前駆細胞 / 免疫学 / 脳神経疾患 / 悪性脳腫瘍 |
Research Abstract |
神経膠腫(グリオーマ)は、最も発生頻度の高い原発性脳腫瘍でありながら、その主たる組織型である神経膠芽腫において生存期間中央値はわずか14.6ヶ月と予後が悪い。近年、治療抵抗性を保持するグリオーマ幹細胞が、再発神経膠芽腫の治療ターゲットとして注目を集めている。グリオーマ幹細胞から発生した悪性神経膠腫組織は、ヒト悪性神経膠腫と同様に非常に血管新生が豊富であるが、この血管内皮細胞関連分子および血管内皮細胞が神経膠芽腫の増殖に強く関与していることが指摘されている。 今回はこの血管内皮(前駆)細胞を標的とした治療を行うべく、実験を行った。初期の実験として、マウス腫瘍組織から血管内皮前駆細胞を取り出し培養することを試みたが、培養には成功しなかったため、まずマウス血管内皮細胞のcell-line(F2)を用いて実験を行った。F2と組織内のEPCとの差異を確認したところ、比較的類似した性質を有していることが判明した。次に、F2ワクチンを行った群と行わなかった群で、皮下腫瘍の増殖や腫瘍組織内の血管内皮の数などについて検討した。この実験結果については、既に別項の論文に掲載済である。次に、マウスグリオーマ幹細胞を使用することとした。慶応義塾大学からグリオーマ幹細胞のTS-G細胞を提供いただき、当研究室でのvitro実験に使用できるか、培養・継代等の初期実験を行った。なお、TS-G細胞は遺伝子組み換え操作を行った細胞であるため、vivo実験に関しては現在倫理委員会に申請中である。TS-G細胞は、グリオーマ幹細胞でありながら、ある条件の培養により、EPC類似の分子発現パターンを呈することがわかった。今後は、この細胞を使用し実験を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EPCの培養が行えなかったことで、当初大幅な遅延を生じたが、大体の細胞を使用することで、おおむね良好な実験経過となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下のような仮説に基づき実験をすすめる予定である。 グリオーマ幹細胞(TS-G細胞)とグリオーマ細胞(GL261細胞)には血管新生関連の分子に発現の差異があるという仮説の検証。TS-G細胞については、通常の培養条件と血管内皮用の培養条件で実験を行う。 TS-G細胞は、SDF-1の阻害によって増殖抑制されるという仮説の検証。SDF-1/CXCR4阻害剤であるAMD3100などで処理することで細胞増殖の抑制を検討する。 TS-G細胞をワクチンとして使用した場合、腫瘍増殖のみならず血管新生が抑制されるという仮説の検証。
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