2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22791339
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
福島 菜奈恵 信州大学, 医学部, 助教 (90334888)
|
Keywords | 神経再生 / 嗅覚機能 / 脳内伝導路 |
Research Abstract |
本年度はまず、成熟ラットの外側嗅索を切断後にイブブロフェン(非ステロイド系抗炎症薬)を持続投与することによって、外側嗅索の再生を促す実験を行った。イブプロフェンにより炎症反応を抑え、切断部のグリア瘢痕の形成を抑制し、グリア瘢痕由来の軸索伸長阻害因子であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現を抑えることによって、外側嗅索が再生することを期待したが、この実験による嗅覚機能の回復はみられなかった。順行性トレーサーによる再生線維の伸長も観察されず、イブプロフェンの効果は確認できなかった。そこで次に、分解酵素であるコンドロイチナーゼABCを局所的に注入することによって、積極的に切断部のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンを除去し、外側嗅索の再生を促す実験を行ったが、本年度の実験では、完全な外側嗅索切断ラットを作成することができず、再生の有無を評価することはできなかった。さらに、再生線維の伸長を阻害するもう一つの因子であるミエリン関連蛋白の影響を減らす実験も行った。新生児ラットでは、外側嗅索の切断後に自然再生が起こり、嗅覚機能も回復することが確認されており、その再生した外側嗅索には髄鞘(ミエリン)がほとんど見られないという特徴がある。そこで、この新生児期に外側嗅索を切断したラットにおいて、再生した外側嗅索をもう一度切断することによって、ミエリン関連蛋白の影響を受けない状況下での外側嗅索の再生を促す実験を行った。この実験では、外側嗅索の切断を新生児期と自然再生後の2回行う必要があるが、本年度の実験では、2回とも完全な外側嗅索切断ラットの作成はできなかった。しかし、2回目は完全に外側嗅索が切断されたラットにおいて、順行性トレーサーによる再生線維の伸長を示唆するような例が観察されたため、来年度も同実験を継続して行うこととした。
|