2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22791339
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
福島 菜奈恵 信州大学, 医学部, 准教授 (90334888)
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Keywords | 神経再生 / 嗅覚機能 / 脳内伝導路 |
Research Abstract |
本年度はまず、成熟ラットの外側嗅索切断後、切断部のグリア瘢痕由来の軸索伸長阻害因子であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカンを積極的に除去する目的で、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン分解酵素であるコンドロイチナーゼABCを切断部へ局所的に注入し、外側嗅索の再生を促す実験を行った。実験の結果、完全切断後に軸索の再生を示唆する線維の伸長が確認されたが、対照群(酵素注入なし)で完全な外側嗅索切断例を作成することができなかったため、対照群の作成と軸索再生動物の追加作成を目的として、来年度も同実験を継続して行うこととした。次に、新生児期に外側嗅索を切断したラットの自然再生後の外側嗅索は髄鞘化されないことを利用し、自然再生後に再度外側嗅索を切断することによって、もう一つの軸索伸長阻害因子であるミエリン関連蛋白の影響を受けない状況下での外側嗅索の再生を促す実験を行った。この実験では、外側嗅索の切断を新生児期と自然再生後の2回行う必要があるが、本年度の実験では、2回とも完全な外側嗅索切断動物の作成ができず、再切断後の軸索再生を確認することはできなかった。しかし、外側嗅索切断新生児ラットの自然再生後の脳において、異所性の新たな神経線維束を発見したため、追加実験を行い、新生児期外側嗅索損傷ラットにおける外側嗅索の再構築について調べることにした。実験の結果、新生児期に外側嗅索を完全に切断したラットでは、本来の位置とは異なる場所(嗅脳溝直下)に再生線維による新たな細い髄鞘化線維束が出現し、その投射範囲が正常ラットと比較すると吻側に限局していることを確認した。さらに、完全切断ではなく、外側嗅索の一部に損傷が加えられたラットにおいても、残存する外側嗅索に加えて同様の新たな髄鞘化線維束が出現していることを発見し、その投射範囲は切断の程度に比例して広がることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外側嗅索切断・酵素注入・逆行性トレーサーの注入・順行性トレーサーの注入を別々の時期に行うため、すべての実験手技の成功動物作成に時間がかかっているためと、新生児期外側嗅索切断実験を行う中で、外側嗅索自然再生後のラットの脳において新たな所見が観察されたことから、当初は予定していなかった追加実験を行い、その観察に時間をかけていたため。
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Strategy for Future Research Activity |
成熟ラットを用いた外側嗅索切断部のグリア瘢痕由来の軸索伸長阻害因子(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)を酵素により除去し再生を促す実験と、新生児期に外側嗅索を切断し、外側嗅索を自然再生させたラットを用いた別の軸索伸長阻害因子(ミエリン関連蛋白)の影響を受けない状況下での再生を促す実験を並行して行っていくことで、異なる軸索伸長阻害因子の外側嗅索再生への影響について調べていく。さらに今後は、線維の再生だけでなく、機能的な再生についても評価していきたい。
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