2011 Fiscal Year Annual Research Report
くも膜下出血後の脳血管攣縮におけるコレステロールの役割
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22791346
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
白尾 敏之 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (70448281)
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Keywords | ラフト / 高脂血症 / 脳血管攣縮 |
Research Abstract |
正常ラット、高脂血症ラット(in vivo系)、コレステロール除去剤(B-サイクロデキストリン;B-CD)を添加した餌で飼育した高脂血症ラット(コレステロール除去ラット)の内頚動脈平滑筋細胞内のラフト構成成分を測定し、血清コレステロール値の上昇やコレステロールの除去が血管平滑筋細胞膜におけるラフト構成成分に及ぼす影響を検討した。 〈血管平滑筋細胞のラフト構成成分の解析> 1.SDラット(正常群、高脂血症群、コレステロール除去群)を用い、全身麻酔・人工呼吸管理下に内頚動脈を採取した。 2.採取した内頚動脈の外膜を丁寧に剥離・除去した。検体を均質化し、有機溶媒抽出後にガスクロマトグラフ法を用いて総コレステロール濃度(mg/g)を測定した。また、同じ検体に対して薄層クロマトグラフ法を用いてphosphatidylcholine濃度(mg/g)を測定した。コレステロールはラフトに多く含まれている。phosphatidylcholineは細胞膜リン脂質の主成分であり、ラフト構成成分に対するコントロールとして評価する。 3.ガスクロマトグラフ法を用いた検討では、高脂血症群では内頚動脈平滑筋細胞内の総コレステロール濃度は正常群と比較して有意な上昇が認められた(0.49±0.09mg/g,vs.0.82±0.24mg/g*)。一方、コレステロール除去群では高脂血症が引き起こす総コレステロール濃度の上昇は有意に抑制された(0.47±0.06mg/g,vs.0.82±0.24mg/g*)。薄層クロマトグラフ法を用いてphosphatidylcholine濃度(mg/g)を測定したところ、3群間に有意差は認められなかった。(mean±sd,*p<0.05) 昨年度までの研究の結果、高脂血症ラットではsphingosylphosphorylcholine(SPC}が引き起こすRho-kinaseを介する脳血管攣縮が増強された。一方、B-CDによるコレステロール除去ラットでは高脂血症が引き起こす脳血管攣縮は改善された。今年度の研究結果からは、脳血管攣縮は血管平滑筋細胞内のラフトの構成成分である総コレステロール濃度により制御される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究結果を含めて、本年度の研究の進行状況は予定範囲内である。また、研究結果も予想と相違なく、来年度の研究にむけて当初の予定通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、電子顕微鏡を用いた血管平滑筋細胞内のラフトの可視化に努める。これまでの研究結果からは血管平滑筋細胞内のコレステロール濃度が脳血管攣縮を制御していることが確認された。一方、血管平滑筋細胞内のphosphatidylcholine濃度は脳血管攣縮に影響を及ぼさなかった。コレステロールはラフトの構成成分であり、phosphatidylcholineは細胞膜リン脂質の主成分でラフト構成成分に対するコントロールとして評価される。従ってコレステロールが引き起こす脳血管攣縮はラフトによって制御されている可能性が示唆されるため、ラフトの可視化による検討を行う必要があると考えている。
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