2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規てんかん治療法の開発をめざして~脳内亜鉛のてんかん原性獲得への関与の解析~
Project/Area Number |
22791349
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
東 洋一郎 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (80380062)
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Keywords | てんかん |
Research Abstract |
[具体的な内容]昨年度の検討により報告者は、予め亜鉛を投与したマウスにピロカルピンを用いててんかん発作を誘発すると、(1)亜鉛非投与群に比べて海馬歯状回下顆粒細胞の神経新生異常が抑制されることを見出し、さらに(2)予備検討で亜鉛投与群の海馬で発作後に神経(幹)前駆細胞の分化や増殖に関わるFGF-2の発現が増加していることも見出した。しかしながら(3)亜鉛投与は海馬の苔状線維の異常発芽に関しては影響を及ぼさなかった。 [意義、重要性]てんかん治療の第一選択は薬物療法である。しかしながら、てんかん患者の10~20%程度は薬剤抵抗性の難治性てんかんであり、さらに薬物療法が可能な患者においても抗てんかん薬はその発作を抑えることはできるが、てんかん原性の要因である脳の構造異常や脳内の細胞や分子の異常を正常に戻したり、阻止することはできない。報告者は、予めマウスに亜鉛を投与しておくことで、てんかん原性化の要因として知られている発作後の海馬歯状回下顆粒細胞における神経新生異常が抑性されることを見出した。この成果は、現在までに報告されていない全く新しい知見であり、臨床的のみならず学術的にも意義があり重要な成果である。さらに報告者は、亜鉛投与が苔状線維の異常発芽を抑制しないことと亜鉛投与群の海馬で発作後にFGF-2の発現が増加していることも見出しており、これらは亜鉛投与による神経新生異常抑性効果の機序を明らかにする上で重要な手掛かりとなる事が期待できるという点で意義のある成果である。
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