2010 Fiscal Year Annual Research Report
悪性脳腫瘍術中蛍光診断の蛍光メカニズ解析と神経膠腫幹細胞への光線力学療法の応用
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22791360
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
池田 直廉 大阪医科大学, 医学部, 助教 (50434775)
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Keywords | 5ALA / 悪性神経膠腫 / 転移性脳腫瘍 / 光線力学的診断 / 光線力学的治療 / 神経膠腫幹細胞 / プロトポルフィリンIX |
Research Abstract |
研究課題1);腫瘍摘出術施行悪性脳腫瘍症例中、5ALAによる光線力学的診断を行った20例について検討した。肉眼的に腫瘍本体が強く赤色蛍光を呈するもの10例(蛍光(+)群)(組織型;悪性神経膠芽腫7例、転移性脳腫瘍3例)、全く蛍光を呈さない腫瘍(蛍光(-)群)10例(組織型;悪性神経膠芽腫2例、転移性脳腫瘍8例)。ポルフィリン代謝にかかわる酵素、トランスポーター13遺伝子をqRT-PCR法でmRNA発現解析を行った。 このうち、蛍光(-)群に比して蛍光(+)群でコプロポルフィリノーゲンオキシダーゼ(ポルフィリン代謝経路におけるミトコンドリア内最初の代謝酵素)(以下;CPOX)遺伝子の発現のみ有意に上昇していた(P=0.0003)。その他の遺伝子発現については明らかな有為差を認めなかった。また、腫瘍細胞におけるCPOXタンパク発現を検証するために摘出腫瘍組織のCPOXに対する免疫組織染色を行ったところ、陽性細胞率は蛍光(+)群で有意に高かった。一方、術前MRIでの造影剤による増強効果、MIB-1 indexについては明らかな差異はなかった。 以上の結果より悪性脳腫瘍における5ALAによる蛍光強度の差異は、CPOXの発現量の差異によっても規定される事が示唆される。 これまでに同様の報告はなく、蛍光を呈さない悪性脳腫瘍に対する術中蛍光診断、光線力学的治療の応用に寄与する可能性がある。 研究課題2);GSCの脳内移植モデルを作成し、腫瘍の生着、増殖の確認を行った。ポルフィリン代謝に関わる前述13遺伝子での遺伝子発現量を測定したところ、膠芽腫細胞株に比してGSCでABCG2トランスポーター遺伝子の発現が有意に高かった。同タンパク質はプロトポルフィリンIXの細胞外くみ出しに関わるタンパク質であり研究目的に示した如く、5ALAによる蛍光強度がGSCにおいて低い事と理論的に一致する。本結果は、GCSに対する光線力学的治療への応用に寄与すると考える。
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