2010 Fiscal Year Annual Research Report
ephrinA2ーEphA2を介した細胞間相互作用による骨代謝回転制御の解明
Project/Area Number |
22791399
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
入江 奈緒子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20449010)
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Keywords | 骨代謝 / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / エフ / エフリン |
Research Abstract |
活発にリモデリングする骨では、破骨細胞による骨吸収と、骨芽細胞による骨形成がダイナミックに制御されている。我々はこれまで、膜タンパクephrinAリガンドとEphA受容体に着目し、これらの相互作用を介した細胞内シグナルにより、破骨細胞の分化亢進と骨芽細胞の分化抑制が起こることを見出した。本研究では、ephrinA-EphA相互作用を阻害する低分子化合物(EphA阻害剤)を用い、骨リモデリングの場において、ephrinA-EphA相互作用がどのような役割をもつかを解明することを目的とした。野生型とEphA2欠損マウスを使用し、細胞培養、3次元骨器官培養、マウス個体などの実験系で検討した。まず、EphA阻害剤をマウス骨髄細胞由来の破骨細胞分化培養系に添加すると、濃度依存的に破骨細胞形成が抑制された。また、EphA2欠損マウス由来骨髄細胞では破骨細胞形成が野生型に比べて減少した。すなわち、ephrinA-EphA相互作用が破骨細胞分化を亢進すると考えられた。一方、マウス頭蓋骨由来骨芽細胞分化培養系にEphA阻害剤を加えると、濃度依存的にアルカリフォスファターゼ活性とカルシウム沈着の増加が認められた。そこでEphA阻害剤を成体マウス大腿骨器官培養系に添加したところ、驚くべきことに、わずか24時間から72時間後に2次海綿骨の骨密度が増加していることがマイクロCTによる定量解析で明らかになった。骨密度の増加にともなって培養液中のカルシウム濃度は減少した。これは、培養液中のカルシウムが骨形成に利用され、骨基質内に取り込まれたためと推測できる。さらにEphA阻害剤を成体マウスに注射すると3日後に大腿骨密度が増加していた。以上より、ephrinA-EphA相互作用は細胞外カルシウムの取込みと骨表面への沈着を抑制することで、骨恒常性の維持に寄与していると考えられた。
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