2010 Fiscal Year Annual Research Report
局所麻酔薬による腫瘍細胞致死機序とその腫瘍特異性に関する研究
Project/Area Number |
22791446
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
田村 隆二 宮崎大学, 医学部, 助教 (40549060)
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Keywords | リドカイン / HL60 / 腫瘍特異性 / フリーラジカル |
Research Abstract |
本研究の目的は局所麻酔薬の腫瘍細胞におけるアポトーシス誘導の原因を明確にすることである。 局所麻酔薬によるアポトーシスがミトコンドリア経路で誘導される可能性として、塩基型局所麻酔薬の細胞内水素イオン捕捉(トラッピング)が考えられる。これは、ミトコンドリア電位は水素イオンによって形成されているため、細胞質における水素イオンの減少によりミトコンドリアが脱分極し、結果としてアポトーシス誘導のトリガーとなりうる。これを証明するために、細胞内pHとミトコンドリア電位を同時記録した。さらに、局所麻酔薬によるアポトーシス誘導の腫瘍そ特異性について検討した。 腫瘍細胞は、正常白血球と比較してミトコンドリア経路のアポトーシスが誘導されやすいのかフローサイトメトリーで検証した。その原因について腫瘍細胞はその過剰なエネルギー需要によりミトコンドリア機能に余裕がないと予想する。そこで、ロテノン、FCCP等のミトコンドリア阻害薬、脱共役剤を用いてミトコンドリア機能不全になる前後でのミトコンドリア膜電位、細胞内ATP濃度、およびミトコンドリア活性酸素産生量などのミトコンドリア機能とアポトーシスの誘導率を腫瘍細胞と正常白血球とで比較した。結果、局所麻酔薬は細胞内をアルカリ化するとともにミトコンドリアを脱分極した。これは、局所麻酔薬の解離定数と挿管した。また、弱塩基で細胞内を中和することで、ミトコンドリアの脱分極は阻止できたので、細胞内アルカリ化が局麻薬による細胞毒性の一因であることが示唆された。続いて、リドカインは、正常白血球と比較して腫瘍細胞(HL60)によりアポトーシスを誘導した。腫瘍細胞は、正常細胞と比較し局所麻酔薬暴露で有意にフリーラジカル、ミトコンドリアカルシウム濃度、ミトコンドリア脱分極が増加し、ATP産生の低下がみられた。腫瘍細胞は正常細胞と比較してミトコンドリア機能が低下していることが示唆された。
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