2010 Fiscal Year Annual Research Report
ドコサヘキサエン酸の新規疼痛制御機能の解明と神経障害性疼痛緩和を目指した基盤研究
Project/Area Number |
22791459
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
中本 賀寿夫 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30432636)
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Keywords | ドコサヘキサエン酸 / 抗侵害作用 / オピオイオド神経系 / 内因性オピオイド |
Research Abstract |
近年、脂肪酸の生理・薬理作用に関する多く報告がなされてきた結果、脂肪酸の摂取量や体内部位における分布バランスの相違によって、脂肪酸がそれぞれ独自の機能を発揮していることが分かってきた。特に、本研究で標的としたドコサヘキサエン酸(DHA)は、これまでに種々の生理・薬理作用に関して、幅広い観点から研究がなされており、安全性が確立していることから、将来さまざまな領域で臨床応用が期待されている。興味深いことに最近、n-3系脂肪酸が痛みを抑制するとの報告が散見されるようになり、n-3系脂肪酸と疼痛制御に関して注目が集まっている。そこで、本研究ではDHAの抗侵害作用ならびにその作用機序の解明を目的とした。 DHAの経口投与は熱や化学刺激などの種々の疼痛試験において、用量依存的な抗侵害作用を示すこと、また、各種オピオイド受容体拮抗薬を用いた検討から、DHAの抗侵害作用にはμおよびδ-オピオイド受容体が関与していることを明らかにした。DHAの各種オピオイド受容体に対する結合実験では、何れの受容体にも親和性を示さなかったが、この効果は脳室内へ抗β-endorphin抗血清を前処置することにより拮抗された。したがって、DHAの抗侵害作用発現機序の一因として、オピオイド受容体に対する直接的作用ではなく、内因性のオピオイドペプチドの一つであるβ-endorphinの遊離を介した間接的作用であることを見いだした。さらに、DHAの脳室内投与においても抗侵害作用が認められ、そのマウス視床下部弓状核においてβ-endorphinの発現増加が免疫組織染色法により確認できた。本結果から、DHAは用量依存的に抗侵害作用を示すことから、疼痛制御において重要な役割を果たしている可能性があることが示された。
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