2011 Fiscal Year Annual Research Report
尿路結石形成初期におけるミトコンドリア障害の関与とそのメカニズムの解明
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22791484
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
新美 和寛 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 臨床研究医 (70551274)
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Keywords | 尿路結石 / ミトコンドリア / 腎尿細管細胞傷害 / 酸化ストレス / Cyclosporine A |
Research Abstract |
尿路結石形成において促進的な役割を果たす腎尿細管細胞傷害について、その発生メカニズムについて解明した。腎尿細管細胞傷害は、ミトコンドリアの内外膜間にあるMitochondrial permeability transition pore(mPTP)の開口が引き金となる。mPTPは、複数の蛋白で構成されており、その内膜側に存在するcyclophilin Dの活性化により開口する。mPTPの開口により細胞質内のプロトンがミトコンドリア内に流入し、脱分極することでミトコンドリアは崩壊する。その後ミトコンドリアを介したアポトーシス経路が惹起され細胞傷害へと導かれる。また、ミトコンドリア内にあるスーパーオキサイドが細胞質内へ放出されることにより酸化ストレスが発生し細胞傷害へと導かれる。私たちは、cyclophilin Dの活性を阻害するcyclosporine A(CsA)を用いてin vitro、in vivo研究を行った。in vitro研究ではラット腎尿細管細胞にシュウ酸カルシウム結晶を添加することによりミトコンドリアが脱分極を引き起こし、酸化ストレスが発生したのに対して、CsAで処理した細胞ではミトコンドリアの脱分極が抑制され、酸化ストレスも軽減した。in vivo研究では、シュウ酸前駆物質であるエチレングリコールを自由飲水させて作成した結石モデルラットにCsAを投与することで酸化ストレスおよび腎尿細管傷害を軽減し、結石の形成を抑制した。また、透過型電子顕微鏡で腎尿細管細胞のミトコンドリアを観察したところ、結石モデルラットではミトコンドリアの二重膜の断裂、内部不正な構造を示したのに対して、CsAを投与.したラットでは、ミトコンドリアの二重膜は保たれており、内部も明瞭で正常のミトコンドリアと類似した像を呈していた。Cyclophilin Dの活性化が、ミトコンドリアの傷害を引き起こすことで、腎尿細管細胞傷害の原因となっており、Cyclophilin Dの活性阻害剤であるCsAがこれを阻害することで結石形成を抑制したことが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的である腎尿細管細胞傷害の発生メカニズムについてCyclophihn Dがその原因であることを証明することができた。他臓器におけるCsAの影響などは今後の研究課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
腎尿細管細胞傷害のメカニズムを解明したことから、今後結石形成を抑制する治療を考案していく。
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Research Products
(3 results)