2011 Fiscal Year Annual Research Report
膀胱癌における抗癌剤投与に伴う血管新生亢進の機序の解明
Project/Area Number |
22791495
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 伸之 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60445244)
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Keywords | 膀胱癌 / レニンアンギオテンシン / シスプラチン / AT1R / 活性酸素 |
Research Abstract |
転移性膀胱癌におけるGold standardはCDDPを基盤とした多剤併用化学療法である。しかし一時的に奏功を得た症例であってもその後進行する。セカンドライン療法として他の抗癌剤或いは分子標的薬を使用した第二相・三相試験が多く施行されているが、十分に高い治療成績の報告はない。この理由として我々は、既存の多くの研究は抗癌剤耐性の機序解明に留まり、耐性獲得下で有効な治療標的と成りうる分子基盤を示唆する知見が乏しいことが原因と考えた。 これまで我々はAngiotensin II(Ang II) Type I受容体(AT1R)が血管新生と関与する所見に着目し、泌尿器科癌におけるAT1Rの発現やAngII-AT1Rシグナルの解明を行ってきた。膀胱癌においてもAng II receptor blocker(ARB)と抗癌剤(CDDP)の併用療法について検討を行い、CDDP存在下でのARBの著明な抗腫瘍効果の増強を報告した。本年度は、ヒト膀胱癌細胞株T24・5637の2種を用い、独自にCDDP耐性株T24PR・5637PR(Platinum Resistance)を樹立し、CDDP耐性獲得後のAT1Rの発現やARBの治療的有用性を検討したところ、CDDP抵抗性獲得過程におけるATIR発現上昇を介したAngII依存性の血管新生亢進が認められ、CDDP抵抗下ではARBを用いたAngII-AT1Rシグナルの制御の重要性を報告した。今後は、本細胞株を用い、抗癌剤治療及び耐性獲得により誘導される微小環境の変化やその原因となるシグナル伝達の更なる解析を予定している。
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