2012 Fiscal Year Annual Research Report
腎細胞癌における小胞体ストレス応答と腫瘍進展の機序
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22791506
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
黒田 健司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 助教 (10306780)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / 低酸素ストレス / GRP78 / IRE1 / 腎細胞癌 |
Research Abstract |
腎細胞癌における増殖・進展の機序の1つ、VHL-HIF経路においてHIFからVEGF, PDGF等の増殖因子が産生されるHIF-VEGF経路が小胞体ストレス応答の制御下にあるとの報告があり、腎細胞癌においても小胞体ストレス応答における重要な役割を担うGRP78の発現増強が新たに報告されている。そこで平成22年度は腎癌検体を用いてGRP78の発現の程度を観察し、臨床・病理双方の因子との相関を見ると同時に、腎癌細胞株におけるGRP78発現の程度、小胞体ストレス応答タンパクとその関連タンパクの発現につき検討した。 128例の原発性腎癌検体(120例; 淡明細胞癌, 8例; 非淡明細胞癌)と9例の転移性腎癌検体を用いて免疫組織化学染色を行った。GRP78陽・陰性の判定は染色の強度と染色細胞の割合に基づいて行い、その陽性度と臨床病理学的因子との関連を検討したところ、GRP78陽性率は、悪性度、腫瘍進達度、静脈浸潤、所属リンパ節転移、遠隔転移と有意な相関があり、癌特異的および無増悪生存率は、全患者ならびに淡明細胞癌症例においてGRP78陽性群で有意に不良であった。以上の結果を平成23年12月Urologia Internationalisにおいて発表した。 腎癌細胞株を用いた基礎実験では、腎癌検体同様Caki-1, 786O, A498, 769Pと代表的な細胞株においてGRP78は発現しており、小胞体ストレス応答タンパクの中ではIRE1の発現が強く、その発現を増減することでHIF1, 2の発現も連動して増減するようであった。現在IRE1に対するsiRNAを用いてIRE1発現を抑制した場合の下流タンパク発現の変化を見るとともにIRE1阻害剤を入手してIRE1の活性を阻害した場合の他のタンパクの変化を観察中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養細胞を用いた実験はウエスタンブロッティングを多用してタンパク発現解析を反復して行っており、その結果に基づいて細胞増殖抑制効果を継続的に観察している。いずれも通常酸素分圧下、低酸素分圧下での実験を行っており当初の予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
培養実験の結果に基づき、可能であれば動物実験へ移行する。移植腫瘍におけるタンパク発現と培養細胞実験におけるタンパク発現に一貫性が認められることを提示したい。
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