2010 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣での血管新生調節作用における、黄体刺激ホルモン受容体の意義の検討
Project/Area Number |
22791516
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 美由紀 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70451812)
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Keywords | 卵巣 / 血管新生 / 黄体刺激ホルモン受容体(LHR) / 血管内皮増殖因子(VEGF) / 多嚢胞卵巣症候群 / 卵巣過剰刺激症候群 |
Research Abstract |
卵巣の血管新生調節機構における、黄体刺激ホルモン受容体(LHR)の役割につき検討した。卵巣におけるLHRの周期的変化が、黄体刺激ホルモンによる、血管新生因子産生刺激シグナルを調節し、血管新生調節に働いているのではないかという仮説のもと、LHRの発現を一過性に抑制する動物モデルを用いた予備実験において、LHRと血管内皮増殖因子(VEGF)の発現が同調して変化するという知見を得た。本研究においては、この仮説の妥当性をさらに証明するべく、LHRとVEGFの発現の関連性につき、ラット卵巣周期全般において定量的PCR法、In situ hybridizaiton法を用いて検討した。排卵期前後では、PMSG処理後の卵胞の発育に伴い、LHR, VEGFmRNA発現はいずれも急激に増加し、hCG処理後その発現は同調して低下し、10時間後の排卵期に最低となった後、その後偽妊娠黄体期day4までは両方とも増加を続けた。その後、LHRに関しては、day8-10まで増加を続けた後、減少に転じた。一方VGEFに関しては、day6にかけて一旦減少し、day8-10に再び増加したのち減少に転じるという二峰性の変化を示した。この結果より、排卵前後ではLHRとVEGFの発現が同調して変化することより、LHRがVEGFの調節因子として働いていることが示唆された。黄体形成期にも同様の現象が見られたが、黄体期中期の一旦血管新生が落ち着く時期にはVEGF発現は減少し、その後の黄体退縮に伴う血管新生と同期するように再び増強する、というように、黄体期中期以降はVEGFとLHR発現の間には乖離が見られ、VEGFの発現調節へのLHR以外の因子の関与が示唆された。本研究により、血管新生因子と、リガンドにより調節を受けるゴナドトロピン受容体の2者の調節機構の関連を示した。これにより血管新生調節機構の破綻に起因する多嚢胞卵巣、卵巣過剰刺激症候群などの病態において、リガンド(LH)反応性の一時的発現抑制を利用してLHRの発現を調節することにより、その機構を是正するという、新たな治療法の可能性を示唆した。
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Research Products
(6 results)