2011 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣での血管新生調節作用における、黄体刺激ホルモン受容体の意義の検討
Project/Area Number |
22791516
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 美由紀 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70451812)
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Keywords | 卵巣 / 血管新生 / 血管内皮増殖因子(VEGF) / 黄体刺激ホルモン受容体(LHR) / 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) / 卵巣過剰刺激症候群(OHSS) |
Research Abstract |
卵巣の血管新生調節機構における、黄体刺激ホルモン受容体(LHR)の役割につき検討した。 前年度までにLHRと血管内皮増殖因子(VEGF)mRNA発現の関連性につき、ラット卵巣周期全般において検討し、卵巣の血管新生における、血管新生因子と、リガンドにより調節を受けるゴナドトロピン受容体の2者の調節機構の関連を明らかにした。 今年度はこの動物実験の結果をもとに、ヒトにおいてもLHRの発現変化がVEGFの産生を制御しており、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)症例ではLHRの発現調節不全のためにVEGFが過剰に発現しているという仮説を立てて研究を進めた。具体的には、体外受精を受けた患者の卵胞液より顆粒膜黄体(GL)細胞を回収し、LHR,VEGFmRNA発現を、PCR法で測定し、これらと、各種パラメータ(卵胞刺激ホルモン(FSH)基礎値、LH基礎値、成熟卵胞数、採卵決定時の血性エストラジオール値、採卵数、成熟卵数、受精卵数)の関連の有無につき検討した。非OHSS症例において、VEGFmRNA発現量と各種パラメータとの間に関連は認めなかったが、LHRmRNA発現については、採卵数および成熟卵数と逆相関を認めた。OHSS症例は症例数が少なく、今回の検討では一定の傾向を見出すには至らなかった。しかし、OHSSは採卵数の多い症例で発症しやすいことは以前より知られている。今向我々は、採卵数が多いほどLHR発現が低下していることを初めて示した。一方、VGEF発現は採卵数により変化しておらず、採卵数が多くなるような環境では、LHRによるVEGF発現調節機構になんらかの異常をきたす、あるいはLHR以外のVEGF発現調節機構が優位に働き、それがある一定のレベルを超えるとVEGFの過剰発現につながりOHSSを引き起こすのかもしれない。本研究の成果をさらに発展させることにより、体外受精患者から採卵時に採取したGL細胞におけるLHRの発現の多寡を測定することにより、OHSS発症の迅速な予測、および重症化の予知が可能になるのみならず、将来的にはLHRの発現調節を利用した新たな治療法に発展することが期待される。
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Research Products
(6 results)