2011 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣子宮内膜症の癌化過程におけるミスマッチ修復異常の関与
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22791524
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
布施谷 千穂 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (50447736)
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Keywords | 子宮内膜症 / 癌化 / ミスマッチ修復 |
Research Abstract |
子宮内膜症は、組織学的に子宮内膜と類似することから、子宮内膜癌の発生に関与するミスマッチ修復(MMR)異常が、卵巣子宮内膜症からの癌化過程にも関与している可能性を考えた。そのことを明らかにするため、本研究では、子官内膜症の癌化過程におけるMMR機構異常と、in vitroで炎症性サイトカインの存在に伴うMMR蛋白発現の変化を検討した。 これまでに、正所性子宮内膜30例、卵巣子官内膜症27例、卵巣子官内膜症合併卵巣癌25例、卵巣癌39例で、MMR機能蛋白であるhMLH1、hMSH2発現を免疫染色にて評価したところ、MMR蛋白発現は、正所性子宮内膜、卵巣子宮内膜症、子宮内膜症合併卵巣癌の内膜症部分、癌部分、卵巣癌の順に減少し、癌で有意に低下していた。これらのうち68例のDNAをマイクロダイセクション法にて抽出し、Microsatellite instabihty (MSI)の有無と臨床病理学的因子との相関を解析したところ、MSI陽性率は、正所性子宮内膜と比較して卵巣子宮内膜症で、卵巣子宮内膜症と比較して卵巣癌で有意に高値であった。 さらに平成23年度では、MSIターゲット遣伝子とされるTGF-ssRII、PTEN、BAX、hMSH6とHNF-1ss遺伝子におけるモノヌクレオチドリピート変異の有無を解析したが、有意なモノヌクレオチドリピート変異を認めず、MSIターゲット遺伝子としては更なる検索が必要である。MSIと臨床病理学的背景の比較では、MSI陽性症例で白血球数とCRP値が有意に高く、MMR蛋白発現は有意に低値であった。そこで、さらに正常子官内膜腺上皮細胞を炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)存在下で長期培養し、MMR発現の変化を検討したところ、MMR発現が抑制された。 これらのことから、子官内膜症にはMMR機構の異常が存在し、炎症によって誘導されるMMR機構の異常が子宮内膜症から卵巣癌への発癌過程に関与する可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)