2010 Fiscal Year Annual Research Report
胎盤特異的遺伝子導入による妊娠高血圧症候群モデルマウスの作製とその解析
Project/Area Number |
22791528
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森岡 裕香 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 特任助教 (00360264)
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Keywords | レンチウイルスベクター / 妊娠高血圧症候群 / 胎盤 |
Research Abstract |
我々はこれまでに、透明帯を除去したマウス胚盤胞期胚にレンチウイルス(LV)ベクターを感染させることで、胎児に遺伝子を導入することなく胎盤のみを遺伝子操作する技術の開発に成功している。本年度はこの技術を応用し、妊娠高血圧症候群の原因候補因子として注目されているsoluble fms-like tyrosine kinase-1 (sFLT1)を胎盤特異的に過剰発現させることで疾患モデルマウスの作製を試み、その有用性を評価した。具体的には、sFLT1を搭載したLVベクター(LV-sFLT1)を種々の濃度で胚盤胞期胚に感染させて偽妊娠マウスに移植し、以下の解析を行った。コントロールとしては、蛍光蛋白質EGFPを発現するLVベクターを使用した。 1.母体の血中sFLT1濃度、血圧、尿蛋白の解析:血中sFLT1濃度に関しては、LV-sFLT1の感染濃度依存的に高値が観察され、妊娠が進行して胎盤が最大となる胎生18.5日目まで上昇し続けた。一方で血圧は、カプシドタンパクp24濃度20ng/mL以上でLV-sFLT1を感染させた群において、胎生16.5日目に急激な上昇が観察され、18.5日目にピークを迎えた。また、胎生18.5日目の尿中アルブミン値を測定したところ、コントロール群と比較して約1.4倍の高値を示した。いずれも、分娩後は速やかにコントロール群と同程度まで下降した。 2.胎児・胎盤重量の解析:胎生18.5日目に帝王切開により胎児と胎盤を摘出し、重量を測定したところ、コントロール群と比較して14~19%の重量低下が観察された。 以上の結果は、妊娠高血圧症候群の患者で報告されている血中sFLT1濃度の上昇、妊娠後期の高血圧、蛋白尿の病態を忠実に反映しており、子宮内胎児発育遅延も観察されている。さらに、分娩もしくは帝王切開に伴う胎盤の脱落により症状が回復する事実とも一致することから、有用な疾患モデルマウスの作製に成功したと考える。
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Research Products
(1 results)