2011 Fiscal Year Annual Research Report
腹水中マクロファージとサイトカインの卵巣癌における役割の解明と分子標的治療の開発
Project/Area Number |
22791529
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
磯部 晶 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (60397619)
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Keywords | 卵巣癌 / 腹膜播種 / TAM / IL-6 / tocilizumab |
Research Abstract |
(1)TAMが卵巣癌細胞株に与える影響の解析 卵巣癌患者より採取した腹水からCD11bで分離したマクロファージ(TAM)は、卵巣癌予後因子の一つであるインターロイキン6(IL-6)を分泌していること、種々の卵巣癌細胞株においてIL-6およびIL-6受容体(IL-6R)が発現していることを予め確認した。実験ではSKOV3ip1細胞を用いた。 昨年度、MTS assayやinvasion assayにてSKOV3ip1の増殖能・浸潤能を検討するに、SKOV3ip1は(1)TAMとの共培養により増殖能・浸潤能が亢進したこと、(2)TAMのない状態でIL6刺激を加えても増殖能・浸潤能が亢進したこと、(3)TAMとの共培養により亢進したSKOV3ip1の増殖能・浸潤能は抗IL-6R抗体であるtocilizumabにより増殖能・浸潤能とも抑制されたことを報告した。TAMの分泌するIL-6がSKOV3ip1の増殖・浸潤を促進し、tocilizumabがこれらを抑制することが示唆された。 今年度は、TAMとの共培養によるSKOV3ip1の血管新生能について検討を加えた。 血管新生促進因子であるVEGFの発現をELISA法にて検討するに、SKOV3ip1はTAMのない状態でIL-6刺激を加えるに用量依存的にVEGFの発現が最高で約3倍に亢進した。また、SKOV3ip1はTAMとの共培養によってもVEGFの発現が約2倍に亢進し、tocilizumabにより約15%抑制された。TAMの分泌するIL-6がSKOV3ip1のVEGF分泌能を亢進し、tocilizumabがこれを抑制する可能性が示唆された。 (2)抗IL-6R抗体による卵巣癌に対する治療効果の検討(in vivo) 昨年度、SKOV3ip1をヌードマウスに腹腔内投与した卵巣癌腹膜播種モデルを用いた検討にて、抗IL-6受容体抗体であるtocilizumabを投与したマウス(治療群)はコントロール(非治療群)に比して、腫瘍重量・播種病変数はそれぞれ約30%に抑制され、腹水産生量はほぼ0となることを報告した。今年度はこれらのマウスより摘出した標本を用いて免疫組織染色を行なった。コントロール群において、IL-6シグナリングの下流にあるStat3のリン酸化が高レベルに生じているのに対し、治療群ではStat3のリン酸化はほぼ完全に抑制された。また、同じ標本を用いて、増殖能の指標であるKi-67と血管新生の指標となるCD31の発現を免疫組織染色でそれぞれ検討するに、コントロール群に比して治療群では、Ki-67の発現が約30%、CD31の発現が約70%抑制された。改めて、tocilizumabはIL-6を標的とした卵巣癌の治療薬となる可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)