2010 Fiscal Year Annual Research Report
一過性脳虚血に対する舌下神経前位核ニューロンの脆弱性
Project/Area Number |
22791568
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
紫野 正人 群馬大学, 医学部, 助教 (20550015)
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Keywords | 舌下神経前位核 / 内側前庭神経核 / 虚血 / パッチクランプ / 自発発火 |
Research Abstract |
脳幹に存在する舌下神経前位核と内側前庭神経核は、水平眼球速度情報を位置情報に変換する神経積分器としての機能がある。本研究の目的は、これらの神経核ニューロンに虚血(無酸素無グルコース刺激;Oxygen-Glucose Deprivation)負荷した時の電気生理学的活動変化を調べることである。まず生後3週齢のラットから脳幹スライス標本を作製しスライスパッチクランプ法にて、膜電位固定下に自発発火を調べると、多くのニューロンで自発発火がみられた。虚血負荷を与えると、膜電位が過分極にシフトし、これにともなって自発発火が消失した。5分間の虚血負荷後、生理的条件に戻すと、ニューロンは速やかに脱分極し、自発発火も回復した。この現象が抑制性入力の増加によるものか、ニューロン自身の内因性膜特性変化によるものかを調べるため、電流固定法にて自発性シナプス後電流(sIPSC)を記録したところ、sIPSCは5分間の虚血負荷に対し、有意な変化を示さなかった。そこで、潅流細胞外液に興奮性・抑制性入力を遮断する阻害剤を投与し、記録しているニューロンを孤立させ、同様の虚血負荷を行った。その結果、膜電位の過分極による自発発火の休止と、生理的条件へ戻すことによる回復が記録できた。このことから、虚血に対してニューロン自身の膜特性が内因性に変化することが示唆された。さらに虚血前後での活動電位の特性について、よく用いられる3つのパラメータについて検討したが、1)後過分極までの時間、2)後過分極の振幅、3)スパイク幅いずれも有意な変化は認めなかった。以上より、上記神経核のニューロンは、虚血に対して自身の特性を変化させ、膜電位を過分極させることが解明された。また、その変化は生理的条件に戻すと速やかに虚血前のレベルに回復したことから、虚血に対してある程度の耐性があることが想定された。
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